2016.09.24更新

お父様を亡くされたご長男から、生前に父から弟に贈与された自宅の購入資金の取り扱いについてのご相談です。


1.ご相談者

 40代の男性

 ①被相続人

  70代の父

 ②相続人

  ご相談者(長男)と二男

 ③遺産

  現金、預金、不動産

 

2.ご相談の内容

 父が亡くなりました。弟は、生前、自宅のマンションを買うにあたって、父から1500万円を贈与されています。相続の話しの中で、私がこの1500万円についても考慮しないと不公平だと言ったところ、弟は、「兄貴だって実家にただで住んでいる。」と言って、話しがつきません。

 弟に自宅のマンションの購入資金として贈与された1500万円は、相続で考慮されないのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

マンションの購入資金も特別受益として相続で考慮されます。

 

(1)特別受益(とくべつじゅえき)って何?

 特別受益とは、相続人が亡くなった人から遺言で贈与を受けたり、婚姻、養子縁組のために、あるいは、生計の資本として贈与を受けたりすることを言います(民法903条)。

 

(2)マンションの購入資金は特別受益になるの?

 自宅のマンションの購入資金も、「生計の資本としての贈与」として特別受益にあたります。

 「生計の資本としての贈与」とは、生計に役立つ贈与は広く含まれるとされています。自宅のマンションの購入資金も、生計に役立つ贈与なので、特別受益にあたります。

 

(3)具体的な相続分はどうやって決めるの?

 特別受益が認められると、これを遺産に加えて総遺産とし、この総遺産を基準として各自の具体的な相続分を算定します。贈与を受けた相続人は、その相続分から贈与された分を除いた分を相続することになります。

 これだけでは分かりにくいので、具体的に見てみましょう。

 例えば、相続が開始した時点での遺産のうち、預金を1000万円、不動産を2500万円とし、弟が1500万円を贈与されたとします。

 弟に贈与された1500万円を特別受益とすると、遺産全体の総額は5000万円(1000万円+2500万円+1500万円=5000万円)になります。

 相続人は、長男と弟の2人なので、法定相続分は2分の1ずつになります。そうすると、長男と弟は、2500万円ずつ相続することになります。

 ただ、弟は、既に1500万円を受け取っているので、2500万円から1500万円を引いた1000万円を相続することになります。

 したがって、最終的には、長男が2500万円、弟が1000万円を相続することになります。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 弟が生前受け取った自宅の購入資金の1500万円は特別受益にあたります。したがって、これを含めて遺産の総額を算定し、その総額の2分の1(法定相続分)にあたる金額を取得することになります。

 他方、弟は、あなたの金額から1500万円を引いた金額を取得することになります。

  

5.ご相談後の対応

 ご相談後、受任し、弟に内容証明を送り、交渉を開始しましたが、交渉ではまとまりませんでした。そこで、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをしました。

 調停では、1500万円を特別受益とし、長男が無償で父と同居していた点については特別受益としない点で合意できました。ただ、ご相談者が自宅の取得を希望したため、自宅をいくらと評価するかでなかなか合意できませんでした。

 この点については、お互いに不動産業者の査定価格を提出し、これに基づいて自宅の評価額を決めました。

 最終的には、ご長男が不動産を取得し、ご長男が自分の現金を持ち出すことなく、預金の範囲内で弟に支払うことができ、無事解決することができました。

 

6.今回のポイント

 マンションの購入資金も、「生計の資本としての贈与」として特別受益にあたります。 

 特別受益が認められると、これを遺産に加えて総遺産とし、この総遺産を基準として各自の具体的な相続分を算定します。

 贈与を受けた相続人は、その相続分から贈与された分を除いた分を相続することになります。

  

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弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 


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2016.09.22更新

お父様を亡くされたご長男から、葬儀費用についてのご相談です。


1.ご相談者

 50代の男性

 ①被相続人

  70代の父

 ②相続人

  ご相談者(長男)と二男

  

2.ご相談の内容

 父が亡くなりました。父の葬儀にあたっては、私が喪主になり、葬儀費用を立て替えて払いました。後日、弟に葬儀費用の半分を請求したところ、喪主である私が全部負担すべきと言って、葬儀費用を払いません。

 葬儀費用は、喪主が全部負担しなければならないのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 葬儀費用は、喪主が全部負担しますが、相続人全員で負担することもあります。

 

(1)葬儀費用は誰が負担するの?

 葬儀費用を負担する人について法律に定めはなく、①喪主が負担する、②相続人全員で負担する、③相続財産から支出する、など考え方が分かれていますが、どのような葬儀をするかは喪主に委ねられているので、喪主が葬儀費用を負担するとされています。

 

(2)他の相続人は全く負担しないの?

 例えば、遺言で遺産の全部を取得した相続人(Y)が負担した葬儀費用について、Yが葬儀費用も相続財産に関する費用として、相続財産から支払われるべきと主張したのに対して、裁判所は、葬儀費用は、相続開始後に生じた債務であるから、喪主が負担すべきと判断しました(東京地裁平成26年3月28日判決)。 

 他方、入院・介護費用や葬儀費用を払った相続人(X)が他の相続人(Y)に相続分の割合に応じて費用の支払を請求した事案で、裁判所は、葬儀、法事等に関する費用は、これを実質的に主宰したものが負担するとした上で、喪主はXであるが、Yは葬儀会社を紹介してその手配をし、香典を払っていないことから、Yも葬儀を主宰する側にあったとして、Yにも相続分の割合に応じた費用負担を認めました(東京地裁平成27年9月29日判決)。

 こうして見ると、葬儀費用は喪主が負担することを前提に、ケースバイケースで判断されていると言えます。

 

4.ご相談者へのアドバイス 

 弟さんが言うように、葬儀費用は喪主が負担するのですが、喪主でない相続人も実質的に葬儀を主宰していたと言える場合には、葬儀費用を負担する場合がありえます。

 したがって、あなたの場合も、弟さんに相続分に応じた葬儀費用を請求できる可能性はあります。

 ただ、実際には、遺産分割調停の中で、話し合いにより葬儀費用を遺産の中から支出することが多いでしょう。

 

5.今回のポイント

 葬儀費用は喪主が負担しますが、喪主でない相続人であっても、相続分の割合に応じた葬儀費用を負担することもあります。

 

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弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 


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2016.09.22更新

お母様を亡くされたご長男から、賃貸不動産の賃料の分け方についてのご相談です。


1.ご相談者

 60代の男性

 ①被相続人

  80代の母

 ②相続人

  ご相談者(長男)と長女

 ③遺産

  現金、預金、不動産

 

2.ご相談の内容

 母が亡くなりました。現在、姉と遺産について話をしていますが、姉は、マンションをもらうと言っています。私としては、その分を現金でもらい、平等に分けるのであれば問題ないのですが、姉は、さらに相続開始後の賃料も自分がもらうと言っています。

 母の死亡後の賃料は、マンションをもらう姉が取得するのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 マンションを取得しない相続人も、相続分に応じて賃料を取得することができます。

 

(1)相続開始後の賃料は誰が取得するの? 

 相続開始後の賃料は、遺産とは別個の財産です。

 したがって、誰がマンションを取得するかにかかわらず、相続開始から遺産分割が確定するまでの賃料は、それぞれの相続人が相続分に応じて取得することになります。

 例えば、Aが死亡後に発生した賃料2億円をめぐって、Aの後妻(X)が前妻の子供(Y)に対して、不動産から生じた賃料は、相続開始にさかのぼって、不動産を取得した相続人が取得すると主張したのに対して、Yは、遺産分割が確定するまでは、法定相続分に従って各相続人が取得すると主張した事案がありました。

 Xの主張によると、Xの取得する金額は1億9000万円になり、Yの主張によると、Xの取得する金額は1億円でした。

 この点について、最高裁は、「遺産は、相続開始から遺産分割までの間は、共同相続人の共有に属するから、遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる賃料債権は、遺産とは別個の財産であって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する。」としました(最高裁平成17年9月8日判決)。

 したがって、相続開始から遺産分割によって不動産を取得する相続人が確定するまでの賃料は、相続分に応じてそれぞれの相続人が取得することになります。

 

(2)裁判しないといけないの?

 相続開始後の賃料は、遺産ではありませんが、相続人間で合意できれば、家庭裁判所の遺産分割調停で分割することも可能です。第三者の家庭裁判所が関与することで、相続開始後の賃料の帰属についても解決できることも多く、訴訟をする前に、まずは遺産分割調停の中で話し合いをするのが一般的です。

 ただ、相続人間で合意ができなければ、訴訟で解決するしかありません。 

 

4.ご相談者へのアドバイス

 お姉さんは「相続開始後の賃料を自分がもらう」と言っていますが、相続が開始してから遺産分割が確定するまでの間の賃料は、それぞれの相続人が相続分に応じて取得することになります。

 したがって、あなたの場合にも、法定相続分に従って、賃料の2分の1を取得することができます。

 

5.ご相談後の対応

 ご相談後、受任し、お姉様に内容証明を送りましたが、交渉ではまとまりませんでした。そこで、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをしました。

 調停では、相続開始後の賃料の取り扱いについては、2分の1ずつ取得することで合意ができ、マンションについても姉が取得することに同意しました。

 ただ、マンションをいくらと評価するで大きな差があり、なかなかマンションの評価額について合意できず、結局、鑑定によって評価額を決めることになりました。

 最終的に、鑑定による評価額を基準として、遺産の総額の2分の1の金銭と、賃料の2分の1の支払を受けて、無事解決することができました。

  

6.今回のポイント

 相続が開始してから遺産分割によって不動産を取得する相続人が確定するまでの賃料は、相続分に応じてそれぞれの相続人が取得することになります。

 相続開始後の賃料は、相続人間で合意できれば、家庭裁判所の遺産分割調停で分割することも可能です。

 

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弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 

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2016.09.03更新

お母様を亡くされたご長女から、誰が遺骨を取得するかについてのご相談です。


1.ご相談者

 60代の女性

 ①被相続人

  80代の母

 ②相続人

  ご相談者(長女)と長男

 

2.ご相談の内容

 母が亡くなりました。弟と遺産について話をしているのですが、遺骨の管理の方法について意見の違いがあり、どちらが遺骨を管理するか揉めています。

 このような場合、どのように遺骨を取得する人を決めるのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 遺骨の管理に争いがある場合、家庭裁判所が決めた祭祀承継者が遺骨を取得します。

 

(1)遺骨を取得する人はどのように決めるの? 

 遺骨の所有権の取得については、仏壇や墓石のように民法で定められていませんが(民法897条参照)、裁判所は、墓石などと同様に、「遺骨は慣習にしたがって祭祀を主宰すべき者に帰属する」としています(最高裁平成元年7月18日判決)。

 したがって、遺骨も、祭祀承継者に帰属することになります。

 

(2)祭祀承継者はどうやって決めるの?

 祭祀承継者は、亡くなった被相続人が祭祀承継者を指定していれば、指定された人が祭祀承継者になり、そのような指定がなければ、慣習によって決めます(民法897条1項)。慣習がない場合には、家庭裁判所が決めます(民法897条2項)。

 家庭裁判所が祭祀承継者を決めるにあたっては、取得する人と亡くなった人との身分関係や生活関係、遺骨の場所、管理の経緯、取得する人の意思・能力等が考慮されます。

 総合的な判断によるので、誰が取得者になるかはケースバイケースと言えます。

 

(3)どんな場合があるの?

 例えば、生前、母が本家の墓に入らいたくないと言っていたので、他の寺に納めたいと考える二女と、夫婦で同じ墓に入れたいと考える長女との間で、二女が長女に遺骨の引き渡しを求めた事案がありました。

 この事案で、裁判所は、「長女は、母の住居に隣接して居住し、母を介護して、親密に交流し療養に努め、遺骨を先祖代々の墓に入れ、仏壇を自宅に引き取る意向である」のに対し、「二女は、墓を自ら管理する意思はなく、仏壇を処分する意向である」から、遺骨の所有権の取得者を長女とするのが相当と判断しました(名古屋高裁平成26年6月26日決定)。

 ちなみに、この事案の第1審では、二女が遺骨の所有権の取得者とされていました。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、遺骨の管理の方法について意見の相違があるということですが、話し合いが可能であれば、分骨という方法も選択肢の1つです。

 話し合いがまとまらないようであれば、家庭裁判所で祭祀承継者を決めるほかありません

 先程述べたように、祭祀承継者は、承継する人と亡くなった人との身分関係や生活関係、祭祀財産の場所、管理の経緯、承継する人の意思・能力等を踏まえて総合的に判断されることになるので、あなたの場合も、遺骨の管理の方法だけでなく、それ以外の事情も考慮して判断されることになります。

 

5.今回のポイント

 遺骨は、墓石などと同様、祭祀承継者に帰属します。

 祭祀承継者について争いがある場合には、家庭裁判所が祭祀承継者を決めます。

 祭祀承継者は、承継する人と亡くなった人との身分関係や生活関係、祭祀財産の場所、管理の経緯、承継する人の意思・能力等によって決められます。

 分骨も選択肢の1つです。

 

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弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 

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2016.09.03更新

お母様を亡くされた二男様から、誰が墓地を承継するかについてのご相談です。


1.ご相談者

 50代の男性

 ①被相続人

  70代の母

 ②相続人

  ご相談者(二男)と長男

 

2.ご相談の内容

 母が亡くなりました。兄と遺産について話をしているのですが、兄から「自分が長男だから長男が墓地を承継するのが当たり前」と言われています。 

 これまで、兄は母と音信不通で、私が母の面倒を看てきたのですが、このような場合にも、兄が墓地を承継するのでしょうか?

 

 3.ご相談への回答

 墓地の承継者は、家庭裁判所が総合的に判断して決めます。

 

(1)墓地の承継はどうやって決めるの? 

 相続にあたって、系譜(系図、過去帳など)、祭具(位牌、仏壇など)、墳墓(墓石など)は、遺産として扱われません。

 これらの祭祀財産は祭祀承継者が指定されている場合には、指定された人が承継し、指定がない場合には、慣習によって承継者が決められます(民法897条1項)。

 また、慣習が明らかでない場合には、家庭裁判所が決めることになります(民法897条2項)。

 墓地も、通常、祭祀財産として扱われるので、上記の順序によって祭祀承継者が決められることになります。

 ちなみに、家督相続の考え方は慣習ではありません。

 

(2)家庭裁判所ではどうやって決めるの?

 家庭裁判所は、審判によって祭祀承継者を決めます。

 祭祀承継者を決めるにあたっては、承継する人と亡くなった人との身分関係や生活関係、祭祀財産の場所、管理の経緯、承継する人の意思・能力等が考慮されますが、総合的な判断によるので、誰が承継者になるかはケースバイケースと言えます。

 

(3)どんな場合があるの?

 例えば、離婚した後亡くなったAの子供が、Aから遺言で全ての財産を贈与された実母に対して、自分が祭祀承継者であることを求めた事案がありました。

 この事案で、裁判所は、「実母に全ての財産を贈与するとの遺言はあるが、祭祀承継者の指定とは異なる面がある。」とした上で、「実母も子供もAとの身分関係という点では優劣がつけがたく、生活関係からすれば、実母に分があるように考えられるが、祭祀の将来的な継続性の観点からすれば、高齢の実母より子供の方が長期にわたって安定した祭祀が行える。」として、子供を祭祀承継者と指定しました(福岡高裁平成19年2月5日決定)。

 この事案では、実母の方が遺言もあり、生活関係については実母に分があるとされながら、長期にわたる安定した祭祀が重視されて子供が祭祀承継者と指定されたもので、なかなか難しい面があるといえます。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、遺言などで明確に祭祀承継者が指定されていないので、最終的に家庭裁判所で祭祀承継者を決めることになります。

 その場合、祭祀承継者は、承継する人と亡くなった人との身分関係や生活関係、祭祀財産の場所、管理の経緯、承継する人の意思・能力等を踏まえて総合的に判断されることになります。

 あなたの場合、これまでお母様の面倒を看てきたということですし、お兄様はこれまで音信不通だったということですので、あなたが祭祀承継者に指定される可能性が高いと言えます。

  

5.今回のポイント

 系譜(系図、過去帳など)、祭具(位牌、仏壇など)、墳墓(墓石など)は、遺産として扱われません。

 祭祀財産は、祭祀承継者が指定されている場合には、指定された人が承継し、指定がない場合には、慣習によって承継者を決めますが、慣習が明らかでない場合には、家庭裁判所が決めることになります。

 祭祀承継者を決めるにあたっては、承継する人と亡くなった人との身分関係や生活関係、祭祀財産の場所、管理の経緯、承継する人の意思・能力等が考慮されます。 

 

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弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

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2016.09.01更新

内縁の奥様から、死亡退職金の相続人への返還についてのご相談です。


1.ご相談者

 50代の女性

 ①被相続人

  50代の男性

 ②相続人

  長男

 

2.ご相談の内容

 内縁の夫が亡くなりました。私は、夫が前の妻と死別した後、夫と暮らすようになりましたが、夫が長男に気兼ねして婚姻届を出すことはしませんでした。

 最近になって、私に死亡退職金が払われることになったのですが、長男から死亡退職金を返すように言われています。死亡退職金を長男に渡さないといけないのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 死亡退職金を相続人に渡す必要はありません。

 

(1)死亡退職金は相続財産にならないの?

 死亡退職金は、相続財産にはなりません。

 相続財産は、死亡したときにその人に帰属している財産のことを言うので、死亡によって初めて発生する死亡退職金請求権は相続財産にはなりません。

 また、死亡退職金を支給するにあたっては、通常、遺族の生活保護の観点から、死亡退職金を支給する遺族の範囲と支給する順位が定められています。

 このように死亡退職金は、相続財産と異なる取り扱いがなされているので、相続財産にならないとされています。

 

(2)どんな場合があるの? 

 例えば、学校の教員であったAが死亡退職金を母と兄弟に与える遺言をしたが、別居中であった妻Bに支給するということで、県が母らへの支給を拒否したという事案がありました。

 この事案で、最高裁は、「条例で死亡退職手当は遺族に支給するものとし、支給を受ける遺族のうち、第一順位者は配偶者であって、配偶者があるときは他の遺族は全く支給を受けないことなど受給権者の範囲及び順位につき民法の規定する相続人の順位決定の原則とは著しく異なった定め方がされていることが明らかであるから、右規定は、専ら職員の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とし、民法とは別の立場で受給権者をさだめたもので、受給権者たる遺族は、相続人としてではなく、自己固有の権利として取得し、相続財産に属さない。」と判断しました(最高裁昭和58年10月14日判決)。

 ちなみに、条例では、支給対象の範囲と順位については、①配偶者(届出をしないが、職員の死亡当時事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)、②こ、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していたもの、③前号に掲げるもののほか、職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していた親族、④子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で第2号に該当しないもの、とされていました。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合も、おそらく死亡退職金の規程に基づいて、あなたに死亡退職金が支給されていると思われます。先程の事例にもあったように、内縁関係にある人も支給対象となる場合がありますので、そのような場合には、内縁の妻に支給されることもあります。

 死亡退職金は、相続財産でないので、内縁の妻に支給された死亡退職金を長男に返還する必要はありません。

 

5.今回のポイント

 死亡退職金は、相続財産ではありません。

 したがって、死亡退職金を相続人に返還する必要はありません。

 

当弁護士へご相談の際には、初回60分の無料相談をご利用いただけます。

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弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 

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