2016.08.16更新

お父様を亡くされたご長女から、相続放棄の期間を過ぎた後の相続放棄についてのご相談です。


1.ご相談者

 50代の女性

 ①被相続人

  70代の父

 ②相続人

  ご相談者の他に長男がいる

 ③相続財産

  現金、預金、不動産(自宅)

 

2.ご相談の内容

 1年前に父が亡くなったのですが、最近になって突然銀行から、父が兄の借金のために連帯保証人になっているので借金を払って欲しいという通知が来ました。これまで父や兄から、父が兄の借金の連帯保証人をしていたという話を聞いたこともありませんし、そのような借金を払える余裕もありません。

 相続放棄をするには、父が亡くなってから3か月以内に手続をしなければいけないと聞きましたが、もう相続放棄をすることはできないのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 相続開始後3か月を経過したあとでも、例外的に相続放棄が認められる場合があります。

 

(1)相続放棄の期間は?

 相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3か月以内にする必要があります(民法915条)。

 「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とは、相続が開始したことと、自分が相続人になったことを知ったときとされています。

 

2)被相続人の死亡を知って3か月過ぎたら、相続放棄できないの?

 被相続人が死亡して自分が相続人になったことを知ったときから3か月を過ぎた後でも、例外的に相続放棄が認められる場合があります。

 例えば、父の死後約1年が経過した後に子供が相続放棄をした事案で、最高裁は、被相続人(父)と離婚した母と一緒に生活していて、父とは全く音信不通の子供が、父からは資産や負債について知らされず、訴訟をされていることも知らなかったことを理由として、相続放棄を適法と判断しました(最高裁昭和59年4月27日判決)。

 また、父の死後、約6年後に子供が相続放棄をした事案で、福岡高裁は、子供たちは父が不動産を所有していたことは知っていたが、父の事業を継続するため母が遺産を相続し、また、結婚や大学進学によって実家を離れて生活し、父の事業に関与したこともなく、父の事業ではない債務の連帯保証債務の存在を知らなかったことから、相続財産が全く存在せず、かつ、相続債務がないと信じたことはことは相当な理由があるとして、相続放棄を認めました(福岡高裁平成27年2月16日判決)。

 このように、離婚や親子の生活状況等によっては、相続財産がなく、かつ、相続債務がないと信じることに相当な理由がある場合には、被相続人の死亡を知って3か月が経過した後も相続放棄ができる可能性があります。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、お父様が連帯保証人になっていることを知らなかったということですが、お父様の相続財産として不動産があるということなので、1年経過後に相続放棄ができるためには、自分が不動産を相続しない場合である必要があります。また、お父様がお兄様の連帯保証人になっていることを知らなかったと信じることについて相当な理由が必要になります。

  ご相談者の場合にも、そのような事情があれば、相続放棄が認められる可能性があります。

 

5.今回のポイント

 相続放棄の期間は、相続が開始し、自分が相続人になったことを知ったときから3か月以内です。

 3か月を経過した後であっても、相続財産がなく、かつ、相続債務が存在しないと信じたことに相当な理由がある場合には、相続放棄が認められる可能性があります。

 

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弁護士費用(税別)

① 単純な相続放棄の場合

  着手金 相続人1人につき、3万円   

  報酬金 0円

  

② 審判事件

  着手金 20万円   

  報酬金 相続放棄によって免れた金額の報酬額(③)

 

③ 相続放棄によって免れた金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 

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2016.08.11更新

ご主人を亡くされた奥様から、借金を相続しない方法についてのご相談です。

1.ご相談者

 40代の女性

 ①被相続人

  40代の夫

 ②相続人

  ご相談者(奥様)の他、子供がいる

 ③相続財産

  マンション、F現金、預金

 

2.ご相談の内容

 夫が亡くなりました。夫は、個人で事業をしていたので、会社が銀行からした借金について連帯保証していました。自宅のマンションにも抵当権がついています。夫が亡くなり、事業を継続することができないので、会社をやめるしかありませんが、1000万円以上の借金が残っています。

 私も子供もこのような借金を払えませんが、借金を相続しないようにすることはできるでしょうか?

  

3.ご相談への回答

相続放棄をして借金を相続しないことができます。

 

(1)相続を放棄することはできるの?

 資産と借金を比べて借金の方が多い場合、相続してもマイナスになるだけなので、相続するメリットはありません。そのような場合、相続を放棄をして借金を相続しないことができます。

 これを「相続放棄」と言います(民法939条)。

 ただ、相続放棄は、あくまで資産も借金も全て放棄するということなので、借金だけ相続しないということはできません。

 

(2)相続放棄はいつまでにするの?

 相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にする必要があります(民法915条)。

 相続開始があったことを知ったときとは、通常、被相続人の死亡を知ったときです。

 したがって、被相続人の死亡を知ったときから3か月以内に相続放棄をする必要があります。

 ただ、死亡したことを知っていても、借金の存在を知らなかったような場合には、それを知ったときから3か月以内に相続放棄をすれば、借金を相続しないことができます。 

 

(3)3か月で相続財産の調査ができない場合はどうしたらいいの?

 相続放棄をした方がよいのかどうかは、相続財産を調査してみなければ分かりません。

 相続財産を把握している場合や、相続財産がそれほど多くない場合には、調査にそれほど時間はかかりませんが、そうでない場合には、3か月では調査できない場合もありえます。

 そのような場合には、家庭裁判所に請求することによって期間を延長することができます。

 

(4)相続放棄はどこにするの?

 相続放棄は、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所にします(民法938条)。

 

(5)資産と借金のどちらが多いか分からないときはどうしたらいいの?

 資産と借金のどちらが多いか分からないという場合に、一度相続放棄をしてしまうと、後で撤回することができません。

 そのような場合には、相続財産の限度で借金を負うことによって、責任を免れることができます。

 これを「限定承認」と言います。

 限定承認をすれば、最終的に借金が相続財産を上回っても、それ以上借金を払う必要はないので、安心できます。

 ただ、限定承認をするには、相続放棄と違って、相続人全員でしなければいけないので(民法923条)、1人でも同意しないと、限定承認をすることはできません。

 限定承認の手続については、相続放棄と同じように、相続の開始を知ったときから3か月以内に、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所にしなければいけません。

  

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、自宅に抵当権がついていて、1000万円以上の借金があるということなので、おそらく借金の方が多いと思いますが、そのような場合には、相続放棄をすることによって借金を負わなくて済みます(その場合、当然のことながら、自宅を相続することはできません。)。

 ただ、自宅に抵当権がついていても、自宅の価値が1000万円以上あるのであれば、相続放棄をする必要はないので、その点の調査が必要になります。

 自宅や預金も含めた資産と、借金と比較しても、どちらが多いか分からないという場合には、限定承認をすることも検討してよいでしょう。

 

5.ご相談後の対応

 ご相談者の場合、結局、自宅と預金を併せても借金を返済できなかったので、相続放棄をしました。

 

6.今回のポイント

 資産と借金を比べて借金の方が多い場合には、相続放棄によって、借金を相続しないことができます。

 相続放棄は、自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にする必要があります。

 3か月で相続財産の調査ができない場合には、家庭裁判所に請求することによって期間を延長することができます。

 相続放棄は、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所にします。

 資産と借金のどちらが多いか分からないという場合には、、限定承認によって、相続財産の限度でしか責任を負わないとすることができます。

 

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弁護士費用(税別)

① 単純な相続放棄の場合

  着手金 相続人1人につき、3万円   

  報酬金 0円

 

② 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 

 


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2016.08.06更新

長男から暴力を振るわれるご主人から、長男に相続させない方法についてのご相談です。

 

1.ご相談者

 70代の男性

 ①推定相続人

  長男

 ②相続財産

  現金、預金、不動産(自宅)

 

2.ご相談の内容

 私には30歳を超えた長男がいますが、私も妻も、これまで長男から度々暴力を振るわれ、「早く死ね」などの暴言を吐かれてきました。

 私も妻も、男には財産を相続させたくないのですが、どうしたらよいでしょうか?

  

3.ご相談への回答

 長男を廃除することによって相続させないことができます。

 

(1)相続させないことはできるの?

 将来相続人になる人(「推定相続人」といいます。)については、次のような場合に、相続権を剥奪することができます(民法892条)。

 ①被相続人を虐待したとき

 ②被相続人に重大な侮辱を加えたとき

 ③推定相続人にその他の著しい非行があったとき

 これを「廃除」といいます。

 被相続人は、家庭裁判所に請求するか、遺言によって、推定相続人に相続させないようにすることができます。 

 なお、廃除できるのは、「遺留分のある」推定相続人なので、「遺留分のない」兄弟姉妹は、廃除の対象になりません。

 ちなみに、遺留分とは、相続人が相続財産に対して保障される一定の割合をいい、兄弟姉妹は相続人であっても、遺留分は認められていません。

 

(2)「虐待したとき」とはどんな場合?

 「虐待したとき」とは、暴力、暴言による心理的な圧迫、生活費を渡さないなどの経済的な圧迫等の行為をいいます。

 例えば、手術を受けて自宅療養中の妻がストーブを取り上げられ、暖房のない部屋で生活し、夫が妻に「黙っていてもまもなく死ぬんだから。」「死人に口なし」等と言っていた事案で、裁判所は、夫が療養に不適切な環境を作り出して継続的に妻にそのような生活を強制し、また、妻の人格を否定する発言をしていることは、客観的にみて「虐待」にあたるとして、夫の廃除を認めました(釧路家庭裁判所北見支部H17.1.6)。

 また、親の土地にビルを建てることや自分の離婚に反対された子供が、親に魔法瓶や醤油の瓶を投げつけ、ガラスが割れ、家の中がめちゃくちゃにした上、玄関に石油を撒いて火をつけると言って脅した事案で、裁判所は、子供の行為は「虐待」にあたるとして、子供の廃除を認めました(東京地裁八王子支部S63.10.25)。

 

(3)「重大な侮辱を加えたとき」とはどんな場合?

 「重大な侮辱」とは、誹謗中傷など名誉を害する行為をいいます。

 例えば、父の再婚により、後妻の遺産相続をめぐって対立し、長男は、父親にぬるいお湯の入ったやかんを投げつけて顔面を腫れあがらせたり、「千葉に行って早く死ね。80まで生きれば十分だ。」「老人は少しくらい興奮させた方がいい。85、6歳まで生きているんだから死んでもかまわない」等と侮辱的な発言をしていた事案で、裁判所は、長男の行為は一過性のものではなく、「重大な侮辱」にあたるとして、廃除を認めました(東京高裁H4.10.14)。 

 

(4)「著しい非行があったとき」とはどんな場合?

 「著しい非行」とは、犯罪や借金、面倒を看ない等の行為をいいます。

 例えば、B(養子)が年に1回外国から帰国して生活費をもらうだけで、病気のA(養親)の看病や世話をせず、また、AのC(Aの姉でBの母)に対する貸していたマンションの明渡訴訟で、毎日何時間も電話をかけてAを非難して訴訟を取り下げるようしつこく迫っていた事案で、裁判所は、Bの行為は「著しい非行」にあたるとして、Bの廃除を認めました(東京高裁H23.5.9)。

 

(5)廃除が認められない場合はどんな場合?

 逆に、次のような事案では、廃除は認められませんでした。

 例えば、父夫婦と長男夫婦が同居し、嫁姑の仲が悪く、長男の妻が義母を突いて怪我をさせたり、お互いの夫婦で、金が盗まれたことなどを理由とする口論が絶えない状況の中、父が長男を廃除する遺言をして亡くなった事案で、裁判所は、廃除が認められるためには、相続的共同関係が破壊する程度に重大でなければならず、父と長男の不和は、嫁姑の不和に起因するもので、長男夫婦が父に侮辱的な発言をしたとしても、その責任を長男のみに負わせるのは不当であり、長男が父から請われて同居し、家業を手伝っていたことも考えると、相続的共同関係が破壊されていたとはいえないとして、長男の廃除を認めませんでした(東京高裁H8.9.2)。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合も、長男から度々暴力を振るわれ、「早く死ね」などの暴言を吐かれるということなので、虐待や重大な侮辱にあたり、廃除が認められる可能性があります。

 ただ、廃除が認められるためには、親子や夫婦等の関係が継続できないほどの重大な事情がなければいけないので、一時的に虐待や侮辱があっても、廃除は認められないので、注意が必要です。

 廃除をするには、家庭裁判所に請求するか、遺言をするかですが、遺言による場合には、公正証書によるのがよいでしょう。 

 

5.今回のポイント

 ①被相続人を虐待したとき、②被相続人に重大な侮辱を加えたとき、③推定相続人に著しい非行があったときには、廃除によって相続させないことができます。

 廃除は、家庭裁判所に請求するか、遺言によってすることができます。

 遺言による場合には、公正証書によるのがよいでしょう。 

 推定相続人が兄弟姉妹の場合には、廃除の対象になりません。

 廃除が認められるためには、親子や夫婦等の関係が継続できないほどの重大な事情が必要です。したがって、一時的に虐待や侮辱があっても、廃除は認められません。

 

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弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 


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2016.07.30更新

お母様を亡くされたご長男から、遺言書を偽造した弟の相続についてのご相談です。

 

1.ご相談者

 50代の男性

 ①被相続人

  母

 ②相続人

  ご相談者(長男)の他に弟がいる

 ③相続財産

  現金、預金、不動産

 

2.ご相談の内容

 母が亡くなりました。父は既に他界していて、相続人は、長男の私と弟です。

 母が亡くなってしばらくして、弟から突然、母の自筆の遺言書を見せられました。遺言書には、全ての財産を弟に相続させる内容が書かれていますが、生前、母からそのような遺言の話しは全く聞いていませんでした。

 弟は、以前から母にお金を無心していて、お金のことで度々母と揉めていました。また、遺言書に書かれてある日付の当時、母は認知症で施設に入所していたので、遺言書を書けるような状態ではありませんでした。

 母の遺言書を偽造してまで財産を独り占めしようとする弟に、相続財産を分けないといけないのでしょうか?

  

3.ご相談への回答

 相続人が遺言書を偽造した場合、相続欠格者として相続人の資格を剥奪することができます。

 

(1)どんな場合に相続人になれないの?

 夫や妻(配偶者)は常に相続人になり(民法890条)、血族については、子(民法887条)、祖父や祖母(直系尊属)(民法889条1項1号)、兄弟姉妹(民法889条1項2号)の順に相続人になります。

 ただ、次のような場合には、相続人になることができません(民法891条)。

 ①故意に被相続人・相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡させ、または死亡させようとしたために刑に処せられた者

 ②被相続人が殺害されたことを知っているのに告発・告発しなかった者

 ③詐欺・強迫によって被相続人の遺言・撤回・取消・変更を妨げた者

 ④詐欺・強迫によって被相続人に遺言をさせ、遺言の撤回・取消・変更をさせた者

 ⑤被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者

 このような事実があると、当然に相続人の資格を剥奪されてしまいます。 

 これを「相続欠格」といいます。

 

(2)どんな場合に偽造が認められるの?

 たとえば、妻の子供が後妻に、遺言の偽造を理由に相続権がないことの確認を求めた事案で、裁判所は、A(被相続人)は込み入った話が不可能で、箸を持つことも相当困難であり、本文部分だけでなく、氏名部分も後妻が自筆したとする筆跡鑑定を根拠に、後妻による遺言書の偽造を認めました(東京地裁H18.4.21判決)。

 ここでは、偽造の立証として、筆跡鑑定が利用されました。

 

(3)偽造が認められない場合はどんな場合?

 ただ、偽造の現場を見ているわけではないので、相手方が遺言書を偽造したことを立証するのは簡単なことではありません。

 実は、先程の判例では、後妻だけでなく、先妻の子供も遺言を持っていたため、後妻もその遺言の偽造を主張して、筆跡鑑定を提出しました。

 しかし、裁判所は、先妻の子供が持っていた遺言については、筆跡鑑定の合理性を否定して、偽造ではないとしたのです。

 ここでも、偽造の立証として、筆跡鑑定が用いられましたが、採用されませんでした。

 他にも、母の相続にあたって、全財産を長女に相続させる自筆の遺言の無効と、遺言の偽造による長女の相続権がないことの確認を求めた事案では、母が高度の認知症であったため、遺言をする能力がないとして、遺言は無効となりましたが、長女による遺言の偽造は認められませんでした(東京地裁H27.3.18判決)。

 このように、偽造ではないとされることも多くあります。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合も、遺言書が偽造であれば、弟に相続権がないことを主張することはできます。

 ただ、先程も説明したとおり、相手方が遺言書を偽造したことを立証するのは簡単なことではありません。偽造でないと判断されることも多くあるので、相手から偽造していないと言われると、やはり裁判で決めるほかありません。

 ご相談者の場合、お母様が遺言書を書けるような状態ではなかったということなので、場合によっては偽造と判断される可能性はあります。

 また、認知症で施設に入所していたということなので、遺言が無効となる可能性があります。

 なお、認知症によって遺言が無効だからといって直ちに偽造とはならないので、その点は注意が必要です。

 

5.今回のポイント

 被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者は、相続人になることができません(民法891条5号)。

 偽造の場合、その現場を見ているわけではないので、相手方が遺言書を偽造したことを立証するのは簡単なことではありません。

 遺言書の偽造の立証の方法として、筆跡鑑定が用いられることがありますが、筆跡鑑定があるからと言って、必ず偽造になるわけではありません。

 

当弁護士へご相談の際には、初回60分の無料相談をご利用いただけます。

まずは、お気軽にご相談ください。

 

弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 


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2016.06.18更新

妻が子供との面会交流の審判に応じないご主人から、面会を強制する方法についてのご相談です。

結論:強制的に子供を連れてきて面会させることはできませんが、間接的な強制執行は認められる場合があります。

詳しくは下記のブログをお読みください。

子供との面会交流でお悩みの方は、無料相談をご利用ください。

① まずは電話で質問してみる03-6912-3900(平日9:00~17:00)タップするとつながります。

 ※三ツ村(ミツムラ)をご指名ください。お話をお聞きして簡単なアドバイス(10分程度)をさせていただきます。

② まずはメールで質問してみる➡お問い合わせフォームはこちら 

 ※弁護士に直接メールが届きます。簡単なアドバイスをさせていただきます。

③ 無料相談を予約する➡ご予約はこちら ※空き時間を検索できます。

 

1.ご相談者

 40代の男性(会社員)

 ①妻は30代(主婦)

 ②婚姻期間は11年

 ③小学生の子供1人

 

2.ご相談の内容

 妻が子供を連れて実家に帰り、離婚調停を申し立ててきたので、私は子供に面会させるよう面会交流の申立てをし、毎月1回子供に面会させる審判が出ました。

 ところが、私が妻に面会を求めても、子供の体調が悪いとか、子供が行きたくないと言っているなどと言って、子供に会わせてくれません。

 どうしたら妻に子供との面会を強制させることができるでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 子供との面会を実現する方法として、強制執行することができますが、強制的に子供を連れてきて面会させること(直接強制)は認められておらず、面会の命令に従わなかった場合に、金銭の支払を命じること(間接強制)しかできません。

 

(1)子供との面会を実現するためにどんな方法があるの?

 子供を監護養育していない親には、子供と面会すること(面会交流)が認められていますが、面会について合意できなかったり、子供との面会を拒否されたりした場合には、家庭裁判所に、子の監護に関する処分(面会交流)の調停・審判の申立てをして、子供との面会交流を求めます。

 調停や審判で子供との面会の方法が決められると、多くの場合、その方法に従って子供との面会が実施されますが、面会交流が認められたのに、相手方が子供と面会させないこともあります。

 そのような場合、子供との面会を実現する方法として、①履行勧告②再調停③強制執行の3つの方法があります。 

 

(2)履行勧告って何をするの?

 履行勧告は、家庭裁判所が調停や審判で定められた面会の履行状況を調査して、面会の履行を勧告します。

 家庭裁判所が勧告するので、それなりに意味はありますし、費用もかからないので、簡単にすることができます。

 ただ、あくまで勧告でしかなく、強制力がないので、相手が勧告に従わなければ意味はありません。

 

(3)再調停って何をするの?

 再調停は、もう一度面会交流の調停を申し立てて、再度話し合いをします。

 相手が面会させないのは、何らかの理由があるのが普通なので、その点について話し合うことで、面会交流が上手く行くこともあります。

 ただ、相手が調停に応じなかったり、調停をしても合意ができなければ意味はありません。

 

(4)強制執行って何をするの?

 強制執行は、子供との面会の実現を強制する措置を取ります

 ただ、強制執行といっても、面会交流は子供の引渡だけでなく、面会させることまで含まれ、直接強制に馴染まないとされているので、強制的に子供を連れてきて面会させること(直接強制)は認められていません。

 そのため、面会交流の強制執行は、相手方に調停や審判の内容を行うように命令し、その命令に従わなかった場合に、金銭の支払を命じる方法(間接強制)によって、面会させることになります。

 このように、強制執行といっても、強制的に子供を連れて来て面会させることができないので、その点で限界があります。

 

(5)どんな場合に間接強制が認められるの?

 調停や審判で決められた面会交流を履行しない場合には、正当な理由がない限り、間接強制によって面会交流を実現することができます(大阪高裁平成14年1月15日決定)。 

 逆に、子供を監護している親に、面会交流をしない正当な理由がある場合や、面会と求める親に、面会交流の目的や方法・手段が不適当で権利の濫用にあたるような、間接強制を求めることができない特別の事情がある場合などには、間接強制が認められません。 

 たとえば、面会交流が子供に混乱を生じさせ、生活環境に悪影響を及ぼし、子供の福祉を害する場合や、面会交流が復縁目的の場合などには、間接強制が認められないとされています。  

(ケース1)

 ①事案「面会交流による高ストレスにより、母との交流は不可」との医師の診断があることを理由に、長男(8歳)との面会を拒否した父に、母が間接強制を請求

 ②結論間接強制を認めた

 ③ポイント子供が面会を拒否しているのは父の言動の可能性がある

 ④判例:裁判所は、子供が母と会いたくないとの意向を表明していることを前提に裁判所が面会交流を認めていること、父が面会に同行して子供に言葉をかけ、子供の忠誠葛藤を進行させた可能性があることを理由として、間接強制を認めました(東京高裁平成24年1月12日決定)。

(ケース2)

 ①事案調停で合意した長男(2歳)との面会を拒否した元妻に対し、元夫が間接強制を請求

 ②結論間接強制を認めた

 ③ポイント面接交渉を拒否しているのは母である、面会によって子の福祉は害されない

 ④判例:裁判所は、長男は2歳であり、面接交渉が実現しないのは母親の意思に基づくこと、元妻が主張する、子供が面接交渉を拒絶している、面接交渉によって子供に情緒的混乱が生じた、面接交渉後、子供が風呂を怖がるようになった、面接交渉中、子供に適切な食事を取らせない等の事情は、面接交渉を拒否しうる阻害事由には当たらないことを理由に、間接強制を認めました(大阪高裁平成19年6月7日決定)。

 なお、面会交流の間接強制をする場合には、面会の日時、場所、方法等について具体的に決められている必要があるので、注意が必要です。 

 

(6)間接強制の金額はいくらくらい? 

 間接強制の際の金銭の支払額は、面会交流の履行を担保するためのものなので、面会させる親の収入によって決まります。

(ケース1)

 ①事案先程のケース1

 ②結論面会の不履行1回につき8万円

 ③ポイント父の収入が以前に高額だった、婚姻費用の支払がある

 ④判例:裁判所は、以前の夫の収入が650万円であったこと、現在は収入がないこと、婚姻費用の支払が毎月5万円であることを理由に、面会の不履行1回につき8万円の支払を命じました(東京高裁平成24年1月12日決定)。

(ケース2)

 ①事案先程のケース2

 ②結論面会の不履行1回につき2万円

 ③ポイント元妻が生活保護を受けている

 ④判例:裁判所は、元妻が実家の手伝いをしながら、生活保護を受けていることを理由に、面会の不履行1回につき2万円の支払を命じました(大阪高裁平成19年6月7日決定)。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合も、審判で毎月1回、子供に面会させることになったのですから、母親は、正当な理由なく面会を拒否することはできません。

 子供の体調が悪いとか、子供が行きたくないと言っているという点については、本当に子供の体調が悪いのであれば仕方ありませんが、面会拒否が何回も続いているようだと、正当な理由とは言えない可能性があります。

 ご相談者としては、①履行勧告、②再調停、③間接強制の中から選んで、母に対して子供と面会させるよう求めることになります。

 この3つの方法の中でどれを選択するかは、相手のこれまでの対応にもよりますが、まずは、履行勧告から始めるのがよいでしょう。

  それでも面会せてくれないのであれば、強制執行によるほかありません。

 

5.今回のポイント

 調停や審判による面会交流を拒否された場合に、子供との面会を実現する方法として、①履行勧告、②再調停、③強制執行の3つの方法があります。 

 履行勧告は、家庭裁判所が調停や審判で定められた面会の履行状況を調査して、面会の履行を勧告しますが、費用がかからないので、簡単にできます。

 強制執行といっても、強制的に子供を連れてきて面会させること(直接強制)は認められていません。

 面会交流の強制執行は、相手方に調停や審判の内容を行うように命令し、その命令に従わなかった場合に、金銭の支払を命じる方法(間接強制)によってします。

 

6.一人では解決できない方、自分でやったけれど解決できなかった方へ

 ブログを読んだけれど一人では解決できそうもない、ブログを読んで自分でやってみたけれど解決できなかったという方は、是非、当弁護士にご相談ください。

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7.弁護士費用(税別)

① 離婚交渉・調停事件

  着手金 30万円(さらに10%OFF)

  報酬金 30万円(さらに10%OFF)+慰謝料・財産分与で得た金額の報酬額(③)

  ※1 婚姻費用・養育費を請求する場合の着手金は、上記の着手金に含まれます。

 

② 離婚訴訟事件

  着手金 40万円(さらに10%OFF)   

  報酬金 40万円(さらに10%OFF)+慰謝料・財産分与で得た金額の報酬額(③)

  ※1 離婚交渉・調停事件に引き続き離婚訴訟事件を依頼する場合の着手金は10万円(さらに10%OFF)となります。

  

③ 慰謝料・財産分与で得た金額の報酬額(さらに10%OFF)

  300万円以下の場合           16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 婚姻費用・養育費で得た報酬金(さらに10%OFF)

  1か月の婚姻費用・養育費の2年分を基準として、③で算定した金額

 

⑤ DVによる保護命令の着手金・報酬金(さらに10%OFF)

  着手金 15万円   

  報酬金 0円

 

⑥ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 

2016.05.06更新

今回は、お父様の自筆証書遺言のある相続人の方から、検認と遺言の効力との関係についてのご相談です。


Q.亡くなった父が自筆の遺言書を残しました。自筆の遺言の場合、家庭裁判所で検認する必要があると聞いたのですが、検認するとこの遺言は有効になるのでしょうか?


A.検認によって遺言書が有効になるわけではありません。


検認は、他の相続人に遺言があることを知らせたり、遺言が偽造や変造されることを防ぐ目的でなされます。
したがって、検認によって遺言書の有効・無効が判断されるわけではありません。

自筆証書遺言がある場合には、遺言書の有効・無効に関係なく、家庭裁判所で検認の手続をし、その後、遺言の無効を主張するのであれば、地方裁判所に遺言無効の訴えをすることになります。


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2016.05.05更新

今回は、封印された自筆証書遺言を発見した相続人の方から、自筆証書遺言の取り扱いについてのご相談です。


Q.母が亡くなりました。生前母から自分が死んだら遺言書のとおりに遺産を分けるように言われていたのですが、貸金庫を調べてみると、封印された封筒に自筆で遺言書と書かれたものがありました。この遺言書の封を開けて遺言書を見てもよいでしょうか。


A.家庭裁判所で開封しなければいけません。

自筆証書遺言を保管している人や遺言書を発見した相続人は、速やかに家庭裁判所に遺言書を提出して相続人に遺言書があることを明らかにしなければいけません(民法1004条)。

これを検認といいます。

封印されている遺言書は、相続人またはその代理人の立会の下、家庭裁判所で開封しなければいけません。

家庭裁判所以外で遺言書を開封すると、5万円以下の過料に処せられます(民法1005条)。

検認の申立ては、相続開始地の家庭裁判所にします。


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2016.05.03更新

今回は、2人のお子様がいる方から、自筆証書遺言の内容を変える方法についてのご相談です。


Q.現在、妻に先立たれて1人で暮らしています。私には、2人の子供がいて、長男に遺産の全部を相続させる自筆証書遺言を書いたのですが、この遺言の内容を変えたいと思っています。内容を変える場合、どのような方法ですればよいでしょうか?


A.自筆証書遺言の内容を変更する場合、変更する場所を指示し、変更した旨を付記して特にこれに署名し、変更した場所に押印する必要があります(民法968条2項)。

自筆証書遺言の場合、公正証書遺言と違って、証人の立会いがないので、偽造や変造を防ぐため、自筆証書遺言の内容を変更する場合にも厳格な要件が定められています。

内容を変更するには、変更する場所を指示して変更内容を記載し、変更したことを記載して署名するとともに、変更した場所に押印する必要があります。

具体的には、加入する場合には、{ を、削除・訂正する場合には、二重線を引いて、変更したい内容を記載します。
欄外に、加入した字数、削除した字数(4字加入、4字削除)を書くと同時に、氏名を書きます。
変更した場所には、押印をします。


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2016.04.18更新

今回は、お父様が亡くなられた弟様から、遺留分の請求の方法についてのご相談です。


Q 父は、兄に全ての遺産を相続させる遺言をして亡くなりました。兄に遺留分を請求したいのですが、どうすればよいでしょうか。

 
A 遺留分の請求は、相続の開始と、遺留分を侵害している贈与や遺贈があったことを知ったときから1年以内、あるいは相続開始後、10年以内に請求する必要があります。

遺留分を侵害されている場合、遺留分を有する相続人は、遺留分を侵害している者に、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺留分減殺の請求をすることができます。

この請求は、相続の開始と、遺留分を侵害している贈与や遺贈があったことを知ったときから1年以内、あるいは、相続開始後10年以内に行使しなければなりません。

遺留分減殺請求は、口頭で行うことも可能ですが、口頭の場合、後で紛争になった場合に立証することができないので、内容証明郵便によって通知するのが一般的です。

あなたの場合、兄に全ての遺産を相続させる遺言によって遺留分を侵害されていることは明らかですから、父が亡くなり兄に全ての遺産を相続させる遺言があることを知ったときから1年以内に、兄に対して内容証明郵便で遺留分減殺請求することになります。


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2016.04.15更新

今回は、お兄様が亡くなられた方から、遺留分についてのご相談です。


Q.兄が亡くなりました。兄には内縁の妻がいますが、遺産の全部を内縁の妻に贈与する遺言をしました。
遺留分という制度があると聞いたのですが、私に遺留はないのでしょうか?


A.兄弟姉妹に遺留分はありません。

民法1028条は、相続人に遺留分を認めていますが、兄弟姉妹は除かれています。

したがって、弟のあなたに遺留分はありません。


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