2016.06.25更新

離婚を考えている医師のご主人から、医師が離婚する場合の財産分与の割合についてのご相談です。

結論:特別な能力や専門的知識によって財産の形成に大きく貢献したと認められるような場合には、貢献の程度に応じて、財産分与の割合が変わることがあります。

妻が取締役の場合には、退任登記の手続を取る必要があります。

詳しくは下記のブログをお読みください。

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1.ご相談者

 50代の男性(医師)

 ①妻は50代(主婦)

 ②婚姻期間は21年

 ③財産は自宅、預金、自動車、株式、保険

 

2.ご相談の内容

 私は、開業医として働いています。妻は、ほとんど家事をせず、また、浪費家でお金遣いが荒く、家には物があふれています。子供も成人しましたし、これ以上結婚生活を続けていても仕方ないので、離婚したいと考えています。

 私の医師としての収入の方が多いのに、財産分与として妻に半分の財産を与えないといけないのでしょうか? 妻が法人の取締役になっているのですが、どのような手続をしたらよいでしょうか。

  

3.ご相談への回答

 財産分の割合は2分の1が原則ですが、特別な能力や専門的知識によって財産の形成に大きく貢献したと認められるような場合には、貢献の程度に応じて、その割合が変わることがあります。 

 妻が取締役の場合、辞任届の提出を受けて退任登記の手続を取る必要があります。  

 

(1)財産分与の割合はどれくらいなの?

 離婚をする場合、相手に夫婦の共有財産を分与するよう請求することができますが、夫婦の共有財産は、夫婦が協力して形成した財産なので、財産形成について夫婦が平等に貢献したものと考えます。

 したがって、財産分与にあたっては、夫と妻がそれぞれ2分の1ずつの権利を持つことになります。

 これを「2分の1ルール」といいます。

 

(2)2分の1以外はないの?

 もっとも、「2分の1ルール」はあくまで原則なので、特別な能力や専門的知識によって財産の形成に大きく貢献したと認められるような場合には、貢献の程度に応じて、その割合が変わることがあります。

(ケース1)

 ①事案妻が医療法人を経営する医師の夫に、2分の1の財産分与を請求

 ②結論夫60%、妻40%

 ③ポイント夫の努力により医師の資格を取得し、高収入を得られた、妻も診療所の経理を担当していた

 ④判例:裁判所は、夫が医師の資格を有するまでの勉学等について婚姻前から個人的な努力をしてきたこと、婚姻後、医師の資格を活用して多くの労力を費やして高額の収入を得ていること、他方、妻は家事や育児だけでなく、診療所の経理も一部担当していたことを理由として、夫の寄与割合を6割、妻の寄与割合を4割としました(大阪高裁平成26年3月13日判決)。

(ケース2)

 ①事案妻が会社経営者の夫に、夫の浮気と暴力を理由に離婚を求め、慰謝料を含めて110億円の財産分与を請求

 ②結論夫95%、妻5%

 ③ポイント夫の特有財産を夫が運用・管理していた、婚姻期間が15年、破綻の原因が夫にある

 ④判例:裁判所は、夫の公私にわたる交際を15年にわたって妻として支え、間接的に共有財産の形成や特有財産の維持に寄与したこと、他方、共有財産の原資のほとんどは夫の特有財産で、夫が運用・管理し、妻が寄与した割合は高くないこと、婚姻が破綻したのは主として夫の責任であること、妻は今後、職業に携わることはできず、今後の扶養の要素も加味すべきことを理由として、妻の寄与割合を5%(10億円)としました(東京地裁平成15年9月26日判決)。 

(ケース3)

 ①事案妻が1級海技士の夫に、財産分与を請求

 ②結論夫70%、妻30%

 ③ポイント夫の努力により資格を取得し、多額の収入を得られた、夫が留守の間、妻は1人で家事・育児をしていた

 ④判例:裁判所は、夫が1級海技士の資格を取得したのは夫の努力によること、資格を活用し、1年に6か月ないし11か月の海上での不自由な生活に耐えた勤務により多額の収入が得られたこと、他方、妻は家庭にあり、留守を守って1人で家事、育児をしていたことを理由として、妻の寄与割合を3割としました(大阪高裁平成12年3月8日判決)。 

(ケース4)

 ①事案芸術家の妻が芸術家の夫に財産分与を請求

 ②結論夫40%、妻60%

 ③ポイント妻も芸術家だった、妻は芸術活動の他、家事労働をしていた、妻の方が収入が多かった

 ④判例:裁判所は、妻と夫は芸術家としてそれぞれの活動に従事するとともに、妻は18年間家事労働に従事してきたこと、当事者双方の共同生活についての費用の負担割合(各自がそれぞれ必要なときに夫婦の生活費用を支出していた)、収入(妻が多い)を考慮して、妻の寄与割合を6割、夫の寄与割合を4割としました(東京家裁平成6年5月31日審判)。

 このように、医師等の専門家、会社経営者など、特別な能力や専門的知識を持ち、多額の資産を形成したような場合には、財産分与の割合が変わる場合があるので注意が必要です。

 

(3)会社の財産も分与しないといけないの?

 医師や会社経営者が離婚する場合、財産分与の割合だけでなく、財産分与の対象となる財産の範囲やその評価が問題となることがあります。

 たとえば、医師や会社経営者が個人で事業をしている場合には結婚している間に形成された財産は財産分与の対象になります。

 これに対して、会社を設立している場合には、一般的には個人の財産と会社の財産は別なので、会社の財産財産分与の対象になりません。

 ただ、名義上会社の財産であっても、個人の財産と同視されるようなときには、会社の財産も財産分与の対象となることがあります。

(ケース)

 ①事案妻が医師の夫に、医療法人の財産を含めて財産分与を請求

 ②結論会社の財産を財産分与の対象にした

 ③ポイント医療法人は実質的には個人経営だった

 ④判例:裁判所は、医療法人は開業後設立されたもので、実質上夫が独りで采配を振っていて、実質上の出資者は夫のみであり、夫の個人経営的色彩が強く、法人の資産収益関係も考慮に入れるべきとして、会社の財産を財産分与の対象とし、妻へ2000万円の財産分与の支払を認めました(福岡高裁昭和44年12月24日判決)。

 

(4)会社の株式があるときはどうやって評価するの?

 先程のように夫が医療法人の株主であったり、出資持分を持っていたりする場合には、株式や出資持分の評価額も問題になります。

 会社が上場していて市場価格がある場合には、市場価格を基準とすればよいのですが、市場価格がない場合には、類似業種と比較して評価したり(類似業種比準方式)、会社の純資産や負債を基準に評価したり(純資産価額方式)することになります。 

(ケース)

 ①事案妻が医師の夫に、医療法人の財産を含めて財産分与を請求

 ②結論純資産評価額の7割

 ③ポイント医療法人の事業運営上の変化の予想が困難

 ④判例:裁判所は、医療法人の財産は、婚姻共同財産であった個人の診療所の財産に由来することを理由として、夫名義の2900口、夫の母名義の50口、妻名義の50口の出資持分全部が財産分与の対象となるとした上で、出資持分の評価額については、将来出資持分の払戻請求や残余財産分配請求がされるまで、医療法人にどのような事業運営上の変化が生じるか確実な予想が困難であることを理由として、純資産評価額の7割相当額を出資持分3000口の評価額としました(大阪高裁平成26年3月13日判決)。

 

(5)妻が従業員・取締役になっているときはどうしたらいいの?

 会社を経営していると、妻を従業員として雇用していたり、取締役に就任させていたりすることがありますが、離婚するときには、この点についても処理しておく必要があります。

 妻が従業員の場合、夫婦であることを前提に雇用しているので、離婚すれば退職するのが一般的でしょうから、退職届の提出を受けて、きちんと退職の手続を取ることが必要です。

 万が一、退職に同意しない場合、解雇することになりますが、離婚が正当な解雇理由になるかどうかは難しいところがあります。したがって、できる限り合意によって退職してもらうのがよいでしょう。

 妻が取締役の場合も、同様に離婚すれば退任するのが一般的でしょうから、辞任届の提出を受けて退任登記の手続を取る必要があります。

 万が一、辞任に同意しない場合には、解任することになりますが、解任自体は理由のいかんを問わずできるものの、正当な理由なく解任した場合には、損害賠償をしなければいけません。離婚が解任の正当な理由となるかどうかは難しいところがあります。したがって、できる限り、辞任してもらうのがよいでしょう。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者は医師とのことですので、専門的知識によって財産の形成に大きく貢献したと考えられます。したがって、財産分与の割合が2分の1でない可能性があります。

 割合としては、収入の程度や妻の関与の度合い等によって異なりますが、6~7割りが目安になります。

 また、ご相談が医療法人を設立しているような場合には、場合によっては、医療法人の財産も財産分与の対象となるので、注意が必要です。

 妻が取締役に就任しているのであれば、退任登記の手続も必要です。

 

5.今回のポイント

 財産分の割合は2分の1が原則ですが、特別な能力や専門的知識によって財産の形成に大きく貢献したと認められるような場合には、貢献の程度に応じて、その割合が変わることがあります。

 財産分与の割合は、収入の程度や妻の関与の度合い等によって異なりますが、6~7割りが目安です。

 個人で事業をしている場合には、結婚している間に形成された財産は財産分与の対象になります。

 会社を設立している場合には、原則として、会社の財産は財産分与の対象になりません。

 ただ、名義上会社の財産であっても、個人の財産と同視されるようなときには、会社の財産も財産分与の対象となることがあります。 

 妻が従業員の場合、退職届の提出を受けて、退職の手続を取ることが必要です。

 妻が取締役の場合、辞任届の提出を受けて退任登記の手続を取る必要があります。

 

6.一人では解決できない方、自分でやったけれど解決できなかった方へ

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7.弁護士費用(税別)

① 離婚交渉・調停事件

  着手金 30万円(さらに10%OFF)

  報酬金 30万円(さらに10%OFF)+慰謝料・財産分与で得た金額の報酬額(③)

  ※1 婚姻費用・養育費を請求する場合の着手金は、上記の着手金に含まれます。

 

② 離婚訴訟事件

  着手金 40万円(さらに10%OFF)   

  報酬金 40万円(さらに10%OFF)+慰謝料・財産分与で得た金額の報酬額(③)

  ※1 離婚交渉・調停事件に引き続き離婚訴訟事件を依頼する場合の着手金は10万円(さらに10%OFF)となります。

  

③ 慰謝料・財産分与で得た金額の報酬額(さらに10%OFF)

  300万円以下の場合           16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 婚姻費用・養育費で得た報酬金(さらに10%OFF)

  1か月の婚姻費用・養育費の2年分を基準として、③で算定した金額

 

⑤ DVによる保護命令の着手金・報酬金(さらに10%OFF)

  着手金 15万円   

  報酬金 0円

 

⑥ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 

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