2016.10.01更新

お母様を亡くされたご長男から、母の土地の無償使用の取り扱いについてのご相談です。


1.ご相談者

 50代の男性

 ①被相続人

  70代の母

 ②相続人

  ご相談者(長男)と二男

 ③遺産

  現金、預金、不動産

 

2.ご相談の内容

 私は、父が亡くなってしばらくしてから、母の土地に私が家を建てて、母と一緒に住むようになりました。今回、母の相続にあたって、弟から、「兄貴が母の土地をただで使っていたのだから、自分も遺産から同額のお金をもらう。」と言われています。

 母の土地を無償で使っていた場合、相続財産から弟にその利益分を払わないといけないのでしょうか? 

 

3.ご相談への回答

 土地を無償で使っていても、母と同居している場合には、利益分を払わなくてよい可能性もあります。

 

(1)特別受益(とくべつじゅえき)って何?

 特別受益とは、相続人が亡くなった人から遺言で贈与を受けたり、婚姻、養子縁組のために、あるいは、生計の資本として贈与を受けたりすることを言います(民法903条)。

 特別受益が認められると、これを遺産に加えて総遺産とし、この総遺産を基準として各自の具体的な相続分を算定します。贈与を受けた相続人は、その相続分から贈与された分を除いた分を相続することになります。

 

(2)土地の無償使用は特別受益になるの?

 土地を無償で使用する場合、一般的に土地の使用貸借契約が成立するので、使用借権による利益が特別受益となります。

 ただ、その場合であっても、親と同居している場合のように、特別受益を免除するような事情がある場合には、特別受益として考えない場合もあります。

 例えば、遺言によって遺産の全部を相続した二男(Y)が長男(X)に対して、25年以上、亡くなった親(A)の所有の土地に建物を建てて無償で使用した対価として1080万円を請求した事案で、裁判所は、「Aの希望によって本件土地上にXが居宅を新築し、XがA夫妻の老後の介護等を負担することで、本件土地の使用を許したものであり、Xの本件土地の無償使用は両親の介護等の見返りであって、生計の資本としての贈与に当たらない。」として、特別受益を認めませんでした(東京地裁平成19年3月27日判決)。

 

(3)具体的な相続分はどうなるの?

 特別受益が認められない場合には、相続が開始した時点での遺産だけを基準として各自の具体的な相続分を算定します。

 例えば、相続人が子供2人で、相続が開始した時点での遺産が1000万円で、土地の無償使用の対価を500万円とした場合を考えてみます。土地の無償使用が特別受益と認められない場合には、500万円は考慮せず、1000万円を基準として相続分を算定することになります。したがって、それぞれの相続人は1000万円の2分の1の500万円を取得することになります。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合も、お母様の土地に自分で建物を建て、お母様と一緒に住んでいたということですので、おそらくお母様の面倒を看ることが前提となっていたと思われます。そうすると、お母様の土地を無償で使用していたとしても、特別受益を免除したと考えられる可能性があります。

 したがって、そのような場合には、お母様亡くなった時点での遺産を基準として、法定相続分の2分の1ずつを取得することになります。

 

5.今回のポイント

 土地を無償で使用する場合、一般的には、使用借権による利益が特別受益となりますが、親と同居している場合のように、特別受益を免除するような事情がある場合には、特別受益として考えない場合もあります。

   

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