2016.10.08更新

お父様を亡くされたご長女から、兄の学費の取り扱いについてのご相談です。


1.ご相談者

 40代の女性

 ①被相続人

  60代の父

 ②相続人

  ご相談者(長女)と長男

 ③遺産

  現金、預金、不動産、株式

 

2.ご相談の内容

 父が亡くなり、兄と相続について話をしています。兄は、私立大学の医学部を卒業して医者になりましたが、父から相当高額な学費を払ってもらっていました。

 相続で兄の学資は考慮されないのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 特別受益として学資が考慮されることもあります。

 

(1)特別受益(とくべつじゅえき)って何?

 特別受益とは、相続人が亡くなった人から遺言で贈与を受けたり、婚姻、養子縁組のために、あるいは、生計の資本として贈与を受けたりすることを言います(民法903条)。

 特別受益が認められると、これを遺産に加えて総遺産とし、この総遺産を基準として各自の具体的な相続分を算定します。贈与を受けた相続人は、その相続分から贈与された分を除いた分を相続することになります。

 

(2)学資は特別受益になるの?

 学資が特別受益にあたるかどうかは、親の資産や社会的地位、他の相続人との比較によって判断されますが、一般的には、扶養の範囲内として特別受益とされないことが多いようです。

 例えば、大学付属中学校に入学し、10年間下宿生活をした長男に対して、学費と下宿費約1700万円が特別受益にあたると主張した事案で、裁判所は、「申立人が高等女学校を卒業後、師範学校を卒業したこと、また、他の子供も高等女学校等を卒業しており、かかる進学状況に照らし、長男のみが他の姉妹に比して高等教育を受けたということはできない。」として、特別受益と認めませんでした(京都家裁宮津支部平成18年10月24日審判)。

 ただ、学資が特別受益として全く認められないわけではありません。

 例えば、大学の入学金、授業料、下宿費を親に負担してもらっていた申立人に対して、これらが特別受益にあたると主張した事案で、裁判所は、「二女は農業に従事して父母の家計に貢献し、四女も給料の一部を渡していたことからすれば、申立人が大学学資の援助を受けていたことは、特別受益と評価すべきである。」として、特別受益を認めました(札幌高裁平成14年4月26日決定)。

 このように、学資が特別受益にあたるかどうかは、ケースバイケースと言えます。

 

(3)具体的な相続分はどうなるの?

 特別受益が認められない場合には、相続が開始した時点での遺産だけを基準として各自の具体的な相続分を算定します。

 これに対して、特別受益が認められた場合には、相続が開始した時点での遺産に特別受益を加えて、具体的な相続分を算定し、特別受益を受けた相続人は、その分を除いて相続することになります。

 例えば、相続人が子供2人で、相続が開始した時点での遺産が4000万円で、学資を2000万円とした場合を考えてみます。

 学資が特別受益と認められない場合には、2000万円は考慮せず、4000万円を基準として相続分を算定することになります。したがって、それぞれの相続人は4000万円の2分の1の2000万円ずつを相続することになります。

 これに対して、学資が特別受益と認められた場合には、学資の2000万円を遺産とみなすので、総遺産は6000万円になります。そうすると、それぞれの相続人は6000万円の2分の1の3000万円ずつを取得することになりますが、学資を受けた相続人は既に2000万円を受け取っているので、1000万円を相続し、もう1人の相続人だけが3000万円を相続することになります。 

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、兄が私立大学の医学部を卒業しているとのことなので、数千万円の費用がかかっていると思われます。したがって、このような高額な学資であれば、特別受益にあたる可能性はあります。

 ただ、学資が特別受益にあたるかどうかは、親の資産や社会的地位、他の相続人との比較によって判断されるので、お父様の資産や社会的地位、ご相談者の学歴と比べて、扶養の範囲内と判断される可能性はあります。

 

5.今回のポイント

 学資が特別受益にあたるかどうかは、親の資産や社会的地位、他の相続人との比較によって判断されますが、一般的には、扶養の範囲内として特別受益とされないことが多いようです。 

 ただ、学資が特別受益として全く認められないわけではなく、ケースバイケースと言えます。

  

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