2016.10.15更新

お父様を亡くされた二男様から、お父様の死亡保険金の取り扱いについてのご相談です。


1.ご相談者

 40代の男性

 ①被相続人

  60代の父

 ②相続人

  ご相談者(二男)と長男

 ③遺産

  現金、預金、不動産

 

2.ご相談の内容

 父が亡くなり、兄と相続のことで話をしています。兄は、父の死亡にあたって多額の死亡保険金を受け取りましたが、私は死亡保険金を一切受け取っていません。

 兄が受け取った父の死亡保険金は、相続にあたって考慮されないのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 死亡保険金も特別受益と同様に、相続で考慮されることがあります。

 

(1)特別受益(とくべつじゅえき)って何?

 特別受益とは、相続人が亡くなった人から遺言で贈与を受けたり、婚姻、養子縁組のために、あるいは、生計の資本として贈与を受けたりすることを言います(民法903条)。

 特別受益が認められると、これを遺産に加えて総遺産とし、この総遺産を基準として各自の具体的な相続分を算定します。贈与を受けた相続人は、その相続分から贈与された分を除いた分を相続することになります。

 

(2)死亡保険金は特別受益になるの?

 死亡保険金は、もともと保険金の受取人の固有の権利で、相続財産ではないので、理論的には特別受益には当たりません。

 ただ、特別受益に当たらないとすると、相続人の間で著しく不公平になることもあるので、そのような場合には、特別受益と同様に扱って、死亡保険金を遺産に加えて相続分を算定します。

 最高裁も、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条(特別受益)の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、特別受益に準じて持ち戻し(遺産に加えること)の対象となるとしています(最高裁平成16年10月29日決定)。

 

(3)どんな場合に特別受益に準じるの?

 特別受益に準じて扱うかどうかは、保険金の額、この額が遺産の総額に対する比率、保険金受取人である相続人、他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の事情を考慮して判断されます(上記最高裁判例)。

 例えば、父の相続で、遺産総額が1億円、2人の相続人のうち、1人(A)が死亡保険金1億円を受け取った事案で、裁判所は、Aが保険金の受取によって遺産総額に匹敵する巨額の利益を得ていることや、受取人がAに変更された際に、父母の扶養をAに託する明確な意図を認めることも困難であることを理由に、死亡保険金は特別受益に準じるとされました(東京高裁平成17年10月27日決定)。

 

(4)特別受益に準じるとどうなるの?

 特別受益に準じる場合には、相続が開始した時点での遺産に死亡保険金を加えて、具体的な相続分を算定し、死亡保険金を受けた相続人は、その分を除いて相続することになります。

 例えば、先程のように相続人が子供2人で、相続が開始した時点での遺産が1億円で、1人の相続人が死亡保険金1億円を受け取ったとします。この場合に、死亡保険金が特別受益と認められると、死亡保険金も遺産とみなすので、総遺産は2億円になります。したがって、それぞれの相続人は2億円の2分の1の1億円ずつを取得することになり、死亡保険金を受け取った相続人は0円、もう1人の相続人が1億円を相続することになります。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、お兄様が多額の死亡保険金を受け取っているとのことですが、「多額」がどの程度か不明ですので、直ちに特別受益に準じて扱われるかどうかは分かりません。

 特別受益に準じて扱われるかどうかは、保険金の額や遺産総額に対する比率等で判断されるので、まずは、その点を確認しましょう。

 

5.今回のポイント

 死亡保険金も相続人の間で著しく不公平になる場合には、特別受益に準じて、遺産に加えて相続分を算定されることがあります。 

 特別受益に準じて扱うかどうかは、保険金の額、この額が遺産の総額に対する比率、保険金受取人である相続人、他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の事情を考慮して判断されます。

 したがって、特別受益に準じるかどうかはケースバイケースと言えます。

 

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