2016.09.22更新

お母様を亡くされたご長男から、賃貸不動産の賃料の分け方についてのご相談です。


1.ご相談者

 60代の男性

 ①被相続人

  80代の母

 ②相続人

  ご相談者(長男)と長女

 ③遺産

  現金、預金、不動産

 

2.ご相談の内容

 母が亡くなりました。現在、姉と遺産について話をしていますが、姉は、マンションをもらうと言っています。私としては、その分を現金でもらい、平等に分けるのであれば問題ないのですが、姉は、さらに相続開始後の賃料も自分がもらうと言っています。

 母の死亡後の賃料は、マンションをもらう姉が取得するのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 マンションを取得しない相続人も、相続分に応じて賃料を取得することができます。

 

(1)相続開始後の賃料は誰が取得するの? 

 相続開始後の賃料は、遺産とは別個の財産です。

 したがって、誰がマンションを取得するかにかかわらず、相続開始から遺産分割が確定するまでの賃料は、それぞれの相続人が相続分に応じて取得することになります。

 例えば、Aが死亡後に発生した賃料2億円をめぐって、Aの後妻(X)が前妻の子供(Y)に対して、不動産から生じた賃料は、相続開始にさかのぼって、不動産を取得した相続人が取得すると主張したのに対して、Yは、遺産分割が確定するまでは、法定相続分に従って各相続人が取得すると主張した事案がありました。

 Xの主張によると、Xの取得する金額は1億9000万円になり、Yの主張によると、Xの取得する金額は1億円でした。

 この点について、最高裁は、「遺産は、相続開始から遺産分割までの間は、共同相続人の共有に属するから、遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる賃料債権は、遺産とは別個の財産であって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する。」としました(最高裁平成17年9月8日判決)。

 したがって、相続開始から遺産分割によって不動産を取得する相続人が確定するまでの賃料は、相続分に応じてそれぞれの相続人が取得することになります。

 

(2)裁判しないといけないの?

 相続開始後の賃料は、遺産ではありませんが、相続人間で合意できれば、家庭裁判所の遺産分割調停で分割することも可能です。第三者の家庭裁判所が関与することで、相続開始後の賃料の帰属についても解決できることも多く、訴訟をする前に、まずは遺産分割調停の中で話し合いをするのが一般的です。

 ただ、相続人間で合意ができなければ、訴訟で解決するしかありません。 

 

4.ご相談者へのアドバイス

 お姉さんは「相続開始後の賃料を自分がもらう」と言っていますが、相続が開始してから遺産分割が確定するまでの間の賃料は、それぞれの相続人が相続分に応じて取得することになります。

 したがって、あなたの場合にも、法定相続分に従って、賃料の2分の1を取得することができます。

 

5.ご相談後の対応

 ご相談後、受任し、お姉様に内容証明を送りましたが、交渉ではまとまりませんでした。そこで、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをしました。

 調停では、相続開始後の賃料の取り扱いについては、2分の1ずつ取得することで合意ができ、マンションについても姉が取得することに同意しました。

 ただ、マンションをいくらと評価するで大きな差があり、なかなかマンションの評価額について合意できず、結局、鑑定によって評価額を決めることになりました。

 最終的に、鑑定による評価額を基準として、遺産の総額の2分の1の金銭と、賃料の2分の1の支払を受けて、無事解決することができました。

  

6.今回のポイント

 相続が開始してから遺産分割によって不動産を取得する相続人が確定するまでの賃料は、相続分に応じてそれぞれの相続人が取得することになります。

 相続開始後の賃料は、相続人間で合意できれば、家庭裁判所の遺産分割調停で分割することも可能です。

 

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弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 

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2016.09.03更新

お母様を亡くされたご長女から、誰が遺骨を取得するかについてのご相談です。


1.ご相談者

 60代の女性

 ①被相続人

  80代の母

 ②相続人

  ご相談者(長女)と長男

 

2.ご相談の内容

 母が亡くなりました。弟と遺産について話をしているのですが、遺骨の管理の方法について意見の違いがあり、どちらが遺骨を管理するか揉めています。

 このような場合、どのように遺骨を取得する人を決めるのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 遺骨の管理に争いがある場合、家庭裁判所が決めた祭祀承継者が遺骨を取得します。

 

(1)遺骨を取得する人はどのように決めるの? 

 遺骨の所有権の取得については、仏壇や墓石のように民法で定められていませんが(民法897条参照)、裁判所は、墓石などと同様に、「遺骨は慣習にしたがって祭祀を主宰すべき者に帰属する」としています(最高裁平成元年7月18日判決)。

 したがって、遺骨も、祭祀承継者に帰属することになります。

 

(2)祭祀承継者はどうやって決めるの?

 祭祀承継者は、亡くなった被相続人が祭祀承継者を指定していれば、指定された人が祭祀承継者になり、そのような指定がなければ、慣習によって決めます(民法897条1項)。慣習がない場合には、家庭裁判所が決めます(民法897条2項)。

 家庭裁判所が祭祀承継者を決めるにあたっては、取得する人と亡くなった人との身分関係や生活関係、遺骨の場所、管理の経緯、取得する人の意思・能力等が考慮されます。

 総合的な判断によるので、誰が取得者になるかはケースバイケースと言えます。

 

(3)どんな場合があるの?

 例えば、生前、母が本家の墓に入らいたくないと言っていたので、他の寺に納めたいと考える二女と、夫婦で同じ墓に入れたいと考える長女との間で、二女が長女に遺骨の引き渡しを求めた事案がありました。

 この事案で、裁判所は、「長女は、母の住居に隣接して居住し、母を介護して、親密に交流し療養に努め、遺骨を先祖代々の墓に入れ、仏壇を自宅に引き取る意向である」のに対し、「二女は、墓を自ら管理する意思はなく、仏壇を処分する意向である」から、遺骨の所有権の取得者を長女とするのが相当と判断しました(名古屋高裁平成26年6月26日決定)。

 ちなみに、この事案の第1審では、二女が遺骨の所有権の取得者とされていました。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、遺骨の管理の方法について意見の相違があるということですが、話し合いが可能であれば、分骨という方法も選択肢の1つです。

 話し合いがまとまらないようであれば、家庭裁判所で祭祀承継者を決めるほかありません

 先程述べたように、祭祀承継者は、承継する人と亡くなった人との身分関係や生活関係、祭祀財産の場所、管理の経緯、承継する人の意思・能力等を踏まえて総合的に判断されることになるので、あなたの場合も、遺骨の管理の方法だけでなく、それ以外の事情も考慮して判断されることになります。

 

5.今回のポイント

 遺骨は、墓石などと同様、祭祀承継者に帰属します。

 祭祀承継者について争いがある場合には、家庭裁判所が祭祀承継者を決めます。

 祭祀承継者は、承継する人と亡くなった人との身分関係や生活関係、祭祀財産の場所、管理の経緯、承継する人の意思・能力等によって決められます。

 分骨も選択肢の1つです。

 

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弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

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2016.09.03更新

お母様を亡くされた二男様から、誰が墓地を承継するかについてのご相談です。


1.ご相談者

 50代の男性

 ①被相続人

  70代の母

 ②相続人

  ご相談者(二男)と長男

 

2.ご相談の内容

 母が亡くなりました。兄と遺産について話をしているのですが、兄から「自分が長男だから長男が墓地を承継するのが当たり前」と言われています。 

 これまで、兄は母と音信不通で、私が母の面倒を看てきたのですが、このような場合にも、兄が墓地を承継するのでしょうか?

 

 3.ご相談への回答

 墓地の承継者は、家庭裁判所が総合的に判断して決めます。

 

(1)墓地の承継はどうやって決めるの? 

 相続にあたって、系譜(系図、過去帳など)、祭具(位牌、仏壇など)、墳墓(墓石など)は、遺産として扱われません。

 これらの祭祀財産は祭祀承継者が指定されている場合には、指定された人が承継し、指定がない場合には、慣習によって承継者が決められます(民法897条1項)。

 また、慣習が明らかでない場合には、家庭裁判所が決めることになります(民法897条2項)。

 墓地も、通常、祭祀財産として扱われるので、上記の順序によって祭祀承継者が決められることになります。

 ちなみに、家督相続の考え方は慣習ではありません。

 

(2)家庭裁判所ではどうやって決めるの?

 家庭裁判所は、審判によって祭祀承継者を決めます。

 祭祀承継者を決めるにあたっては、承継する人と亡くなった人との身分関係や生活関係、祭祀財産の場所、管理の経緯、承継する人の意思・能力等が考慮されますが、総合的な判断によるので、誰が承継者になるかはケースバイケースと言えます。

 

(3)どんな場合があるの?

 例えば、離婚した後亡くなったAの子供が、Aから遺言で全ての財産を贈与された実母に対して、自分が祭祀承継者であることを求めた事案がありました。

 この事案で、裁判所は、「実母に全ての財産を贈与するとの遺言はあるが、祭祀承継者の指定とは異なる面がある。」とした上で、「実母も子供もAとの身分関係という点では優劣がつけがたく、生活関係からすれば、実母に分があるように考えられるが、祭祀の将来的な継続性の観点からすれば、高齢の実母より子供の方が長期にわたって安定した祭祀が行える。」として、子供を祭祀承継者と指定しました(福岡高裁平成19年2月5日決定)。

 この事案では、実母の方が遺言もあり、生活関係については実母に分があるとされながら、長期にわたる安定した祭祀が重視されて子供が祭祀承継者と指定されたもので、なかなか難しい面があるといえます。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、遺言などで明確に祭祀承継者が指定されていないので、最終的に家庭裁判所で祭祀承継者を決めることになります。

 その場合、祭祀承継者は、承継する人と亡くなった人との身分関係や生活関係、祭祀財産の場所、管理の経緯、承継する人の意思・能力等を踏まえて総合的に判断されることになります。

 あなたの場合、これまでお母様の面倒を看てきたということですし、お兄様はこれまで音信不通だったということですので、あなたが祭祀承継者に指定される可能性が高いと言えます。

  

5.今回のポイント

 系譜(系図、過去帳など)、祭具(位牌、仏壇など)、墳墓(墓石など)は、遺産として扱われません。

 祭祀財産は、祭祀承継者が指定されている場合には、指定された人が承継し、指定がない場合には、慣習によって承継者を決めますが、慣習が明らかでない場合には、家庭裁判所が決めることになります。

 祭祀承継者を決めるにあたっては、承継する人と亡くなった人との身分関係や生活関係、祭祀財産の場所、管理の経緯、承継する人の意思・能力等が考慮されます。 

 

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弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 


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2016.09.01更新

内縁の奥様から、死亡退職金の相続人への返還についてのご相談です。


1.ご相談者

 50代の女性

 ①被相続人

  50代の男性

 ②相続人

  長男

 

2.ご相談の内容

 内縁の夫が亡くなりました。私は、夫が前の妻と死別した後、夫と暮らすようになりましたが、夫が長男に気兼ねして婚姻届を出すことはしませんでした。

 最近になって、私に死亡退職金が払われることになったのですが、長男から死亡退職金を返すように言われています。死亡退職金を長男に渡さないといけないのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 死亡退職金を相続人に渡す必要はありません。

 

(1)死亡退職金は相続財産にならないの?

 死亡退職金は、相続財産にはなりません。

 相続財産は、死亡したときにその人に帰属している財産のことを言うので、死亡によって初めて発生する死亡退職金請求権は相続財産にはなりません。

 また、死亡退職金を支給するにあたっては、通常、遺族の生活保護の観点から、死亡退職金を支給する遺族の範囲と支給する順位が定められています。

 このように死亡退職金は、相続財産と異なる取り扱いがなされているので、相続財産にならないとされています。

 

(2)どんな場合があるの? 

 例えば、学校の教員であったAが死亡退職金を母と兄弟に与える遺言をしたが、別居中であった妻Bに支給するということで、県が母らへの支給を拒否したという事案がありました。

 この事案で、最高裁は、「条例で死亡退職手当は遺族に支給するものとし、支給を受ける遺族のうち、第一順位者は配偶者であって、配偶者があるときは他の遺族は全く支給を受けないことなど受給権者の範囲及び順位につき民法の規定する相続人の順位決定の原則とは著しく異なった定め方がされていることが明らかであるから、右規定は、専ら職員の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とし、民法とは別の立場で受給権者をさだめたもので、受給権者たる遺族は、相続人としてではなく、自己固有の権利として取得し、相続財産に属さない。」と判断しました(最高裁昭和58年10月14日判決)。

 ちなみに、条例では、支給対象の範囲と順位については、①配偶者(届出をしないが、職員の死亡当時事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)、②こ、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していたもの、③前号に掲げるもののほか、職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していた親族、④子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で第2号に該当しないもの、とされていました。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合も、おそらく死亡退職金の規程に基づいて、あなたに死亡退職金が支給されていると思われます。先程の事例にもあったように、内縁関係にある人も支給対象となる場合がありますので、そのような場合には、内縁の妻に支給されることもあります。

 死亡退職金は、相続財産でないので、内縁の妻に支給された死亡退職金を長男に返還する必要はありません。

 

5.今回のポイント

 死亡退職金は、相続財産ではありません。

 したがって、死亡退職金を相続人に返還する必要はありません。

 

当弁護士へご相談の際には、初回60分の無料相談をご利用いただけます。

まずは、お気軽にご相談ください。

 

弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 

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2016.08.20更新

お父様を亡くされたご長男から、生命保険金での借金の返済についてのご相談です。


1.ご相談者

 50代の男性

 ①被相続人

  80代の父

 ②相続人

  ご相談者(長男)と二男

 

2.ご相談の内容

 父が亡くなりました。父には、生前、多額の借金があったので、二男と一緒に相続放棄をしました。他方、父は、受取人を相続人として生命保険を掛けていたので、私と二男が生命保険金を受け取りました。

 ところが、債権者から、「保険金を受け取ったなら、借金を払え。」と言われています。生命保険金から借金を払わないといけないのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 生命保険金で借金を返済する必要はありません。

 

(1)生命保険金は相続財産にならないの? 

 生命保険金は、相続財産になりません。

 生命保険の保険料は、死亡した人が払っていますが、相続財産は、死亡したときにその人に帰属している財産のことを言うので、死亡によって初めて発生する保険金請求権は相続財産にはなりません。

 したがって、生命保険金で借金を払う必要はありません。

 

(2)どんな場合があるの?

 例えば、遺言によって相続財産の全部を受け取ることになっている第三者のXが、相続人のYに対して、受取人が「相続人」と指定されている養老保険金を請求した事案がありました。

 この事案で、最高裁は、「保険金受取人としてその請求権発生当時の相続人たるべき個人を特に指定した場合には、右請求権は、保険契約の効力発生と同時に相続人の固有財産となる」と判断しました(最高裁昭和40年2月2日判決)。

 また、自動車を被相続人に販売した者Xが、限定承認(プラスの財産の限度でしか債務を負担しないこと)をし、かつ、保険金を受け取った相続人Yに対し、自動車の未払い代金を請求した事案がありました。

 この事案でも、最高裁は、同様に「保険金請求権は、相続人が保険契約に基づく固有の権利として取得したもので、被相続人の財産には属しない」と判断して、未払い代金の請求を認めませんでした(最高裁昭和48年6月29日判決)。

 なお、この事案は、受取人が指定されておらず、保険約款に被保険者の相続人に支払うとの条項があった場合でした。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、相続放棄をした以上、一切の債務を負う必要はありません。

 生命保険金は相続財産ではないので、お父様の借金を払う必要はありません。

 

5.ご相談後の対応

 債権者から催促がしつこいため、生命保険金が相続財産にあたらず、借金を返済する必要がない旨の内容証明を送りました。

 債権者から猛烈な抗議がありましたが、最終的には納得してもらいました。

 

6.今回のポイント

 生命保険金は、相続財産ではありません。 

 したがって、生命保険金で借金を払う必要はありません。

 

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弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 


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2016.08.16更新

お父様を亡くされたご長女から、相続放棄の期間を過ぎた後の相続放棄についてのご相談です。


1.ご相談者

 50代の女性

 ①被相続人

  70代の父

 ②相続人

  ご相談者の他に長男がいる

 ③相続財産

  現金、預金、不動産(自宅)

 

2.ご相談の内容

 1年前に父が亡くなったのですが、最近になって突然銀行から、父が兄の借金のために連帯保証人になっているので借金を払って欲しいという通知が来ました。これまで父や兄から、父が兄の借金の連帯保証人をしていたという話を聞いたこともありませんし、そのような借金を払える余裕もありません。

 相続放棄をするには、父が亡くなってから3か月以内に手続をしなければいけないと聞きましたが、もう相続放棄をすることはできないのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 相続開始後3か月を経過したあとでも、例外的に相続放棄が認められる場合があります。

 

(1)相続放棄の期間は?

 相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3か月以内にする必要があります(民法915条)。

 「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とは、相続が開始したことと、自分が相続人になったことを知ったときとされています。

 

2)被相続人の死亡を知って3か月過ぎたら、相続放棄できないの?

 被相続人が死亡して自分が相続人になったことを知ったときから3か月を過ぎた後でも、例外的に相続放棄が認められる場合があります。

 例えば、父の死後約1年が経過した後に子供が相続放棄をした事案で、最高裁は、被相続人(父)と離婚した母と一緒に生活していて、父とは全く音信不通の子供が、父からは資産や負債について知らされず、訴訟をされていることも知らなかったことを理由として、相続放棄を適法と判断しました(最高裁昭和59年4月27日判決)。

 また、父の死後、約6年後に子供が相続放棄をした事案で、福岡高裁は、子供たちは父が不動産を所有していたことは知っていたが、父の事業を継続するため母が遺産を相続し、また、結婚や大学進学によって実家を離れて生活し、父の事業に関与したこともなく、父の事業ではない債務の連帯保証債務の存在を知らなかったことから、相続財産が全く存在せず、かつ、相続債務がないと信じたことはことは相当な理由があるとして、相続放棄を認めました(福岡高裁平成27年2月16日判決)。

 このように、離婚や親子の生活状況等によっては、相続財産がなく、かつ、相続債務がないと信じることに相当な理由がある場合には、被相続人の死亡を知って3か月が経過した後も相続放棄ができる可能性があります。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、お父様が連帯保証人になっていることを知らなかったということですが、お父様の相続財産として不動産があるということなので、1年経過後に相続放棄ができるためには、自分が不動産を相続しない場合である必要があります。また、お父様がお兄様の連帯保証人になっていることを知らなかったと信じることについて相当な理由が必要になります。

  ご相談者の場合にも、そのような事情があれば、相続放棄が認められる可能性があります。

 

5.今回のポイント

 相続放棄の期間は、相続が開始し、自分が相続人になったことを知ったときから3か月以内です。

 3か月を経過した後であっても、相続財産がなく、かつ、相続債務が存在しないと信じたことに相当な理由がある場合には、相続放棄が認められる可能性があります。

 

当弁護士へご相談の際には、初回60分の無料相談をご利用いただけます。

まずは、お気軽にご相談ください。

 

弁護士費用(税別)

① 単純な相続放棄の場合

  着手金 相続人1人につき、3万円   

  報酬金 0円

  

② 審判事件

  着手金 20万円   

  報酬金 相続放棄によって免れた金額の報酬額(③)

 

③ 相続放棄によって免れた金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 

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2016.08.11更新

ご主人を亡くされた奥様から、借金を相続しない方法についてのご相談です。

1.ご相談者

 40代の女性

 ①被相続人

  40代の夫

 ②相続人

  ご相談者(奥様)の他、子供がいる

 ③相続財産

  マンション、F現金、預金

 

2.ご相談の内容

 夫が亡くなりました。夫は、個人で事業をしていたので、会社が銀行からした借金について連帯保証していました。自宅のマンションにも抵当権がついています。夫が亡くなり、事業を継続することができないので、会社をやめるしかありませんが、1000万円以上の借金が残っています。

 私も子供もこのような借金を払えませんが、借金を相続しないようにすることはできるでしょうか?

  

3.ご相談への回答

相続放棄をして借金を相続しないことができます。

 

(1)相続を放棄することはできるの?

 資産と借金を比べて借金の方が多い場合、相続してもマイナスになるだけなので、相続するメリットはありません。そのような場合、相続を放棄をして借金を相続しないことができます。

 これを「相続放棄」と言います(民法939条)。

 ただ、相続放棄は、あくまで資産も借金も全て放棄するということなので、借金だけ相続しないということはできません。

 

(2)相続放棄はいつまでにするの?

 相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にする必要があります(民法915条)。

 相続開始があったことを知ったときとは、通常、被相続人の死亡を知ったときです。

 したがって、被相続人の死亡を知ったときから3か月以内に相続放棄をする必要があります。

 ただ、死亡したことを知っていても、借金の存在を知らなかったような場合には、それを知ったときから3か月以内に相続放棄をすれば、借金を相続しないことができます。 

 

(3)3か月で相続財産の調査ができない場合はどうしたらいいの?

 相続放棄をした方がよいのかどうかは、相続財産を調査してみなければ分かりません。

 相続財産を把握している場合や、相続財産がそれほど多くない場合には、調査にそれほど時間はかかりませんが、そうでない場合には、3か月では調査できない場合もありえます。

 そのような場合には、家庭裁判所に請求することによって期間を延長することができます。

 

(4)相続放棄はどこにするの?

 相続放棄は、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所にします(民法938条)。

 

(5)資産と借金のどちらが多いか分からないときはどうしたらいいの?

 資産と借金のどちらが多いか分からないという場合に、一度相続放棄をしてしまうと、後で撤回することができません。

 そのような場合には、相続財産の限度で借金を負うことによって、責任を免れることができます。

 これを「限定承認」と言います。

 限定承認をすれば、最終的に借金が相続財産を上回っても、それ以上借金を払う必要はないので、安心できます。

 ただ、限定承認をするには、相続放棄と違って、相続人全員でしなければいけないので(民法923条)、1人でも同意しないと、限定承認をすることはできません。

 限定承認の手続については、相続放棄と同じように、相続の開始を知ったときから3か月以内に、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所にしなければいけません。

  

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、自宅に抵当権がついていて、1000万円以上の借金があるということなので、おそらく借金の方が多いと思いますが、そのような場合には、相続放棄をすることによって借金を負わなくて済みます(その場合、当然のことながら、自宅を相続することはできません。)。

 ただ、自宅に抵当権がついていても、自宅の価値が1000万円以上あるのであれば、相続放棄をする必要はないので、その点の調査が必要になります。

 自宅や預金も含めた資産と、借金と比較しても、どちらが多いか分からないという場合には、限定承認をすることも検討してよいでしょう。

 

5.ご相談後の対応

 ご相談者の場合、結局、自宅と預金を併せても借金を返済できなかったので、相続放棄をしました。

 

6.今回のポイント

 資産と借金を比べて借金の方が多い場合には、相続放棄によって、借金を相続しないことができます。

 相続放棄は、自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にする必要があります。

 3か月で相続財産の調査ができない場合には、家庭裁判所に請求することによって期間を延長することができます。

 相続放棄は、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所にします。

 資産と借金のどちらが多いか分からないという場合には、、限定承認によって、相続財産の限度でしか責任を負わないとすることができます。

 

当弁護士へご相談の際には、初回60分の無料相談をご利用いただけます。

まずは、お気軽にご相談ください。

 

弁護士費用(税別)

① 単純な相続放棄の場合

  着手金 相続人1人につき、3万円   

  報酬金 0円

 

② 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 

 


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2016.08.06更新

長男から暴力を振るわれるご主人から、長男に相続させない方法についてのご相談です。

 

1.ご相談者

 70代の男性

 ①推定相続人

  長男

 ②相続財産

  現金、預金、不動産(自宅)

 

2.ご相談の内容

 私には30歳を超えた長男がいますが、私も妻も、これまで長男から度々暴力を振るわれ、「早く死ね」などの暴言を吐かれてきました。

 私も妻も、男には財産を相続させたくないのですが、どうしたらよいでしょうか?

  

3.ご相談への回答

 長男を廃除することによって相続させないことができます。

 

(1)相続させないことはできるの?

 将来相続人になる人(「推定相続人」といいます。)については、次のような場合に、相続権を剥奪することができます(民法892条)。

 ①被相続人を虐待したとき

 ②被相続人に重大な侮辱を加えたとき

 ③推定相続人にその他の著しい非行があったとき

 これを「廃除」といいます。

 被相続人は、家庭裁判所に請求するか、遺言によって、推定相続人に相続させないようにすることができます。 

 なお、廃除できるのは、「遺留分のある」推定相続人なので、「遺留分のない」兄弟姉妹は、廃除の対象になりません。

 ちなみに、遺留分とは、相続人が相続財産に対して保障される一定の割合をいい、兄弟姉妹は相続人であっても、遺留分は認められていません。

 

(2)「虐待したとき」とはどんな場合?

 「虐待したとき」とは、暴力、暴言による心理的な圧迫、生活費を渡さないなどの経済的な圧迫等の行為をいいます。

 例えば、手術を受けて自宅療養中の妻がストーブを取り上げられ、暖房のない部屋で生活し、夫が妻に「黙っていてもまもなく死ぬんだから。」「死人に口なし」等と言っていた事案で、裁判所は、夫が療養に不適切な環境を作り出して継続的に妻にそのような生活を強制し、また、妻の人格を否定する発言をしていることは、客観的にみて「虐待」にあたるとして、夫の廃除を認めました(釧路家庭裁判所北見支部H17.1.6)。

 また、親の土地にビルを建てることや自分の離婚に反対された子供が、親に魔法瓶や醤油の瓶を投げつけ、ガラスが割れ、家の中がめちゃくちゃにした上、玄関に石油を撒いて火をつけると言って脅した事案で、裁判所は、子供の行為は「虐待」にあたるとして、子供の廃除を認めました(東京地裁八王子支部S63.10.25)。

 

(3)「重大な侮辱を加えたとき」とはどんな場合?

 「重大な侮辱」とは、誹謗中傷など名誉を害する行為をいいます。

 例えば、父の再婚により、後妻の遺産相続をめぐって対立し、長男は、父親にぬるいお湯の入ったやかんを投げつけて顔面を腫れあがらせたり、「千葉に行って早く死ね。80まで生きれば十分だ。」「老人は少しくらい興奮させた方がいい。85、6歳まで生きているんだから死んでもかまわない」等と侮辱的な発言をしていた事案で、裁判所は、長男の行為は一過性のものではなく、「重大な侮辱」にあたるとして、廃除を認めました(東京高裁H4.10.14)。 

 

(4)「著しい非行があったとき」とはどんな場合?

 「著しい非行」とは、犯罪や借金、面倒を看ない等の行為をいいます。

 例えば、B(養子)が年に1回外国から帰国して生活費をもらうだけで、病気のA(養親)の看病や世話をせず、また、AのC(Aの姉でBの母)に対する貸していたマンションの明渡訴訟で、毎日何時間も電話をかけてAを非難して訴訟を取り下げるようしつこく迫っていた事案で、裁判所は、Bの行為は「著しい非行」にあたるとして、Bの廃除を認めました(東京高裁H23.5.9)。

 

(5)廃除が認められない場合はどんな場合?

 逆に、次のような事案では、廃除は認められませんでした。

 例えば、父夫婦と長男夫婦が同居し、嫁姑の仲が悪く、長男の妻が義母を突いて怪我をさせたり、お互いの夫婦で、金が盗まれたことなどを理由とする口論が絶えない状況の中、父が長男を廃除する遺言をして亡くなった事案で、裁判所は、廃除が認められるためには、相続的共同関係が破壊する程度に重大でなければならず、父と長男の不和は、嫁姑の不和に起因するもので、長男夫婦が父に侮辱的な発言をしたとしても、その責任を長男のみに負わせるのは不当であり、長男が父から請われて同居し、家業を手伝っていたことも考えると、相続的共同関係が破壊されていたとはいえないとして、長男の廃除を認めませんでした(東京高裁H8.9.2)。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合も、長男から度々暴力を振るわれ、「早く死ね」などの暴言を吐かれるということなので、虐待や重大な侮辱にあたり、廃除が認められる可能性があります。

 ただ、廃除が認められるためには、親子や夫婦等の関係が継続できないほどの重大な事情がなければいけないので、一時的に虐待や侮辱があっても、廃除は認められないので、注意が必要です。

 廃除をするには、家庭裁判所に請求するか、遺言をするかですが、遺言による場合には、公正証書によるのがよいでしょう。 

 

5.今回のポイント

 ①被相続人を虐待したとき、②被相続人に重大な侮辱を加えたとき、③推定相続人に著しい非行があったときには、廃除によって相続させないことができます。

 廃除は、家庭裁判所に請求するか、遺言によってすることができます。

 遺言による場合には、公正証書によるのがよいでしょう。 

 推定相続人が兄弟姉妹の場合には、廃除の対象になりません。

 廃除が認められるためには、親子や夫婦等の関係が継続できないほどの重大な事情が必要です。したがって、一時的に虐待や侮辱があっても、廃除は認められません。

 

当弁護士へご相談の際には、初回60分の無料相談をご利用いただけます。

まずは、お気軽にご相談ください。

 

弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 


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2016.07.30更新

お母様を亡くされたご長男から、遺言書を偽造した弟の相続についてのご相談です。

 

1.ご相談者

 50代の男性

 ①被相続人

  母

 ②相続人

  ご相談者(長男)の他に弟がいる

 ③相続財産

  現金、預金、不動産

 

2.ご相談の内容

 母が亡くなりました。父は既に他界していて、相続人は、長男の私と弟です。

 母が亡くなってしばらくして、弟から突然、母の自筆の遺言書を見せられました。遺言書には、全ての財産を弟に相続させる内容が書かれていますが、生前、母からそのような遺言の話しは全く聞いていませんでした。

 弟は、以前から母にお金を無心していて、お金のことで度々母と揉めていました。また、遺言書に書かれてある日付の当時、母は認知症で施設に入所していたので、遺言書を書けるような状態ではありませんでした。

 母の遺言書を偽造してまで財産を独り占めしようとする弟に、相続財産を分けないといけないのでしょうか?

  

3.ご相談への回答

 相続人が遺言書を偽造した場合、相続欠格者として相続人の資格を剥奪することができます。

 

(1)どんな場合に相続人になれないの?

 夫や妻(配偶者)は常に相続人になり(民法890条)、血族については、子(民法887条)、祖父や祖母(直系尊属)(民法889条1項1号)、兄弟姉妹(民法889条1項2号)の順に相続人になります。

 ただ、次のような場合には、相続人になることができません(民法891条)。

 ①故意に被相続人・相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡させ、または死亡させようとしたために刑に処せられた者

 ②被相続人が殺害されたことを知っているのに告発・告発しなかった者

 ③詐欺・強迫によって被相続人の遺言・撤回・取消・変更を妨げた者

 ④詐欺・強迫によって被相続人に遺言をさせ、遺言の撤回・取消・変更をさせた者

 ⑤被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者

 このような事実があると、当然に相続人の資格を剥奪されてしまいます。 

 これを「相続欠格」といいます。

 

(2)どんな場合に偽造が認められるの?

 たとえば、妻の子供が後妻に、遺言の偽造を理由に相続権がないことの確認を求めた事案で、裁判所は、A(被相続人)は込み入った話が不可能で、箸を持つことも相当困難であり、本文部分だけでなく、氏名部分も後妻が自筆したとする筆跡鑑定を根拠に、後妻による遺言書の偽造を認めました(東京地裁H18.4.21判決)。

 ここでは、偽造の立証として、筆跡鑑定が利用されました。

 

(3)偽造が認められない場合はどんな場合?

 ただ、偽造の現場を見ているわけではないので、相手方が遺言書を偽造したことを立証するのは簡単なことではありません。

 実は、先程の判例では、後妻だけでなく、先妻の子供も遺言を持っていたため、後妻もその遺言の偽造を主張して、筆跡鑑定を提出しました。

 しかし、裁判所は、先妻の子供が持っていた遺言については、筆跡鑑定の合理性を否定して、偽造ではないとしたのです。

 ここでも、偽造の立証として、筆跡鑑定が用いられましたが、採用されませんでした。

 他にも、母の相続にあたって、全財産を長女に相続させる自筆の遺言の無効と、遺言の偽造による長女の相続権がないことの確認を求めた事案では、母が高度の認知症であったため、遺言をする能力がないとして、遺言は無効となりましたが、長女による遺言の偽造は認められませんでした(東京地裁H27.3.18判決)。

 このように、偽造ではないとされることも多くあります。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合も、遺言書が偽造であれば、弟に相続権がないことを主張することはできます。

 ただ、先程も説明したとおり、相手方が遺言書を偽造したことを立証するのは簡単なことではありません。偽造でないと判断されることも多くあるので、相手から偽造していないと言われると、やはり裁判で決めるほかありません。

 ご相談者の場合、お母様が遺言書を書けるような状態ではなかったということなので、場合によっては偽造と判断される可能性はあります。

 また、認知症で施設に入所していたということなので、遺言が無効となる可能性があります。

 なお、認知症によって遺言が無効だからといって直ちに偽造とはならないので、その点は注意が必要です。

 

5.今回のポイント

 被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者は、相続人になることができません(民法891条5号)。

 偽造の場合、その現場を見ているわけではないので、相手方が遺言書を偽造したことを立証するのは簡単なことではありません。

 遺言書の偽造の立証の方法として、筆跡鑑定が用いられることがありますが、筆跡鑑定があるからと言って、必ず偽造になるわけではありません。

 

当弁護士へご相談の際には、初回60分の無料相談をご利用いただけます。

まずは、お気軽にご相談ください。

 

弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 


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2016.07.21更新

離婚を考えている奥様から、財産分与における退職金の取り扱いについてのご相談です。

結論:既に支払われた退職金はもちろん、将来の退職金であっても、財産分与の対象となる可能性があります。

詳しくは下記のブログをお読みください。

離婚の財産分与でお悩みの方は、無料相談をご利用ください。

① まずは電話で質問してみる03-6912-3900(平日9:00~19:00)タップするとつながります。

 ※三ツ村(ミツムラ)をご指名ください。お話をお聞きして簡単なアドバイス(10分程度)をさせていただきます。

② まずはメールで質問してみる➡お問い合わせフォームはこちら 

 ※弁護士に直接メールが届きます。簡単なアドバイスをさせていただきます。

③ 無料相談を予約する➡ご予約はこちら ※空き時間を検索できます。

 

1.ご相談者

 50代の女性(主婦)

 ①夫は50代(会社員)

 ②婚姻期間は22年

 ③財産は預金、マンション

 

2.ご相談の内容

 夫はろくに生活費を渡さず、私に隠れて数百万円の借金をしていたことがありました。そのときは夫の両親にも助けてもらい、借金をきれいにしました。

 ところが、最近になって、また夫が借金をしていることが分かりました。これ以上夫と一緒にいても仕方ないので、離婚しようと思っています。夫は、あと数年で定年退職し、会社から退職金が払われますが、それまで一緒にいたくありません。

 今離婚すると夫の退職金は財産分与でもらえないのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 将来支払われる退職金は、当然には財産分与の対象にはなりません。

 将来退職金が支払われることが確実といえるような場合に、財産分与の対象になります。

 

(1)退職金は財産分与の対象になるの?

 財産分与は、夫婦が協力して形成した財産を清算する制度なので、夫婦の共有財産といえる限り、財産分与の対象になります。

 退職金は、賃金の後払いの性質を有するとされているので、離婚の時点で退職金が既に支払われている場合には、退職金についても夫婦の協力によって形成されたものと考えられ、婚姻期間中の給料の支払と同様、財産分与の対象になります。

  ただ、財産分与は、あくまで夫婦が協力して形成した財産を清算する制度なので、退職金も婚姻期間に相当する部分に限られます。

 たとえば、学校を卒業して何年か働いた後で結婚したというような場合には、退職金自体は結婚する前の期間も含めて算定されていますが、財産分与にあたっては、結婚した後の期間しか対象にならないことになります。

(ケース)

 ①事案協議離婚した妻が夫に財産分与として既に支払われた退職金1761万円の2分の1を請求

 ②結論410万円

 ③ポイント夫の勤務期間12年2カ月のうち、妻が同居していたのは5年8か月だった

 ④判例:裁判所は、夫の退職金は、夫が勤務した12年2か月を対象としたもので、妻が夫と同居してその維持形成に寄与したのは5年8か月であるから、同居期間だけを寄与期間として計算すべきであるとして、同居期間の退職金820万円の2分の1の410万円の支払を認めました(横浜家裁平成13年12月26日審判)。

 

(2)将来の退職金は財産分与の対象になるの?

 将来退職金が支払われる場合であっても、まだ夫が退職していない場合には、退職金が支払われていないので、実際に分けることができません。

 将来の退職金は、倒産など経済状況によっては支払われないこともありますし、解雇された場合に支払われないこともあります。また、定年前に自己都合で退職した場合にも退職金の額が変わってきます。

 このように将来の退職金には、不確定な要素が多く、退職金の金額や支払自体を確定できないので、財産分与の対象としにくい面があります。

 とはいえ、このまま特に問題なく勤務していれば退職金が払われることが確実な場合もあります。

 そのため、将来の退職金については、将来退職金が支払われることが確実といえるような場合に、財産分与の対象になるとされています。

(ケース)

 ①事案妻が協議離婚後、離婚時に34年間勤務していた元夫の将来の退職金の財産分与を請求

 ②結論612万円の財産分与を認めた

 ③ポイント元夫の勤務する会社の規模が大きかった

 ④判例:裁判所は、将来支給を受ける退職金であっても、その支給を受ける高度の蓋然性が認められるときには、財産分与の対象とすることができるとした上で、元夫の勤務する企業の規模等から、退職時に退職金の支給を受けることはほぼ確実であることを理由に、退職金が支給されたときに612万円を支払うことを認めました(東京高裁平成10年3月13日決定)。

 

(3)どんな場合に将来の退職金の財産分与が認められるの?

 どのような場合に「将来退職金が支払われることが確実な場合」といえるかは、本人の事情や会社の事情もあり、なかなか難しいところがあります。

(ケース1)

 ①事案妻が国家公務員の夫に将来の退職手当の財産分与を請求

 ②結論550万円の財産分与を認めた

 ③ポイント夫が国家公務員だった、定年まで8年だった、現在の退職手当額と定年時の退職手当額の差が大きいので妻に配慮した

 ④判例:裁判所は、夫は別居時まで23年勤続し、現在自己都合によって退職しても1632万円の退職手当を受給できること、婚姻して別居するまで妻の協力があったことは否定できないこと、定年まで8年あり、退職手当を受給できない場合もあること、定年退職時の退職手当額1160万円が現在の自己都合の退職手当額907万円と比べて差が大きいことなどを理由に、907万円のうち、550万円の財産分与を認めた上で、支払時期は将来退職手当を受給したときとしました(名古屋高裁平成12年12月20日判決)。 

(ケース2)

 ①事案妻が会社員の夫に将来の退職手当の財産分与を請求

 ②結論188万円の財産分与を認めた

 ③ポイント夫が6年後まで勤務する蓋然性がある、退職金の支給について不確定な要素がある

 ④判例:裁判所は、夫婦関係は悪化していたが、別居時までは妻としての役割を果たしていたこと、現在退職した場合でも699万円の退職金が受け取れること、夫が6年後の定年まで現在の会社に勤務して退職金を支給される蓋然性が認められること、退職金の支給について不確定な要素を全く否定できないことを理由に、定年時の退職金額を現在の金額に引き直した額の5割にあたる188万円の財産分与を認めました(東京地裁平成11年9月3日判決)。

  

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、婚姻期間が長いので、その間も夫が継続して会社に勤務していたとすると相当な退職金を受け取ることができるのでしょう。その場合、定年退職まであと数年ということなので、定年まで勤務する可能性は高いと言えます。

 そうすると、将来退職金が支払われることが確実といえる可能性が高いので、将来の退職金も財産分与の対象とされる可能性は高いといえます。

 その場合、財産分与の対象となる将来の退職金の金額をどのように決めるかについては、いろいろな考えがあるので、一概には言えません。

 ただ、財産分与の割合については、特段の事情がない限り「2分の1ルール」に基づいて、2分の1の権利を持つといえます。

 

5.今回のポイント

 離婚の時点で退職金が既に支払われている場合には、当然、財産分与の対象になります。

 退職金も婚姻期間に相当する部分についてのみ財産分与の対象になります。

 将来の退職金は、当然には財産分与の対象とはならず、将来退職金が支払われることが確実といえるような場合に財産分与の対象になります。

 どのような場合に「将来退職金が支払われることが確実な場合」といえるかは、本人の事情や会社の事情に照らして判断されるのでケースバイケースですが、6~8年後に退職する場合には、財産分与の対象となる可能性があります。

  

6.一人では解決できない方、自分でやったけれど解決できなかった方へ

 ブログを読んだけれど一人では解決できそうもない、ブログを読んで自分でやってみたけれど解決できなかったという方は、是非、当弁護士にご相談ください。

 当弁護士へのご相談の際には、初回60分の無料相談をご利用いただけます。

 まずは、安心してお気軽にご相談ください。

>>永田町・赤坂見附の弁護士三ツ村の離婚問題に関する情報はこちら

  

7.弁護士費用(税別)

① 離婚交渉・調停事件

  着手金 30万円(さらに10%OFF)

  報酬金 30万円(さらに10%OFF)+慰謝料・財産分与で得た金額の報酬額(③)

  ※1 婚姻費用・養育費を請求する場合の着手金は、上記の着手金に含まれます。

 

② 離婚訴訟事件

  着手金 40万円(さらに10%OFF)   

  報酬金 40万円(さらに10%OFF)+慰謝料・財産分与で得た金額の報酬額(③)

  ※1 離婚交渉・調停事件に引き続き離婚訴訟事件を依頼する場合の着手金は10万円(さらに10%OFF)となります。

  

③ 慰謝料・財産分与で得た金額の報酬額(さらに10%OFF)

  300万円以下の場合           16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 婚姻費用・養育費で得た報酬金(さらに10%OFF)

  1か月の婚姻費用・養育費の2年分を基準として、③で算定した金額

 

⑤ DVによる保護命令の着手金・報酬金(さらに10%OFF)

  着手金 15万円   

  報酬金 0円

 

⑥ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 

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