2016.11.18更新

2人のお子様がいるお父様から、自分で遺言を作る場合の書き方についてのご相談です。

 

1.ご相談者

 70代の男性

 ①推定相続人

  長男、二男

 ②財産

  現金、預金、不動産、株式

 

2.ご相談の内容

 3年前に妻が亡くなり、2人の子供がいます。私が死んだ後、子供たちが相続で揉めないように遺言を作りたいと思っています。

 自分で遺言を作りたいのですが、どのように書けばよいよいでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 遺言の内容の全文と日付と氏名の全てを自分で書いて、押印します。

 

(1)自分で遺言を作るにはどのように書けばいいの? 

 自分で自書して作成する遺言のことを自筆証書遺言と言います。

 自筆証書遺言は、遺言をする人が遺言の内容の全文と日付と氏名を自書し、押印して作成します。

 証人の立会いが必要ないので、1人で簡単に作ることができますが、簡単に作れるが故に、偽造・変造を防ぐため厳格な要件が定められています。

 

(2)パソコンで作ってもいいの?

 自筆証書遺言は、全文を自書する必要があるので、代筆やパソコンで作成したものは無効です。

 また、病気などの理由で他人の添え手を受けた場合については、①遺言者が証書作成時に自書能力を有し、②他人の添え手が単に始筆若しくは改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みに任されており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけで、かつ、③添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが筆跡の上で判定できる場合に有効とされています(最高裁昭和62年10月8日判決)。

 

(3)「年月」しか書いていない場合はどうなるの?

 日付がなかったり、年月だけで日の記載がないものも無効です。

 また、〇年〇月吉日と書いてある場合も無効です(最高裁昭和54年5月31日判決)。

 

(4)氏が書いていない場合はどうなるの?

 名前だけで氏が書いていない場合であっても、同一性が分かれば有効とされています。

 

(5)実印でないといけないの?

 押印は実印である必要はありません。

 

(6)自筆証書遺言のメリット・デメリット

 自筆証書遺言のメリットは、1人で簡単に作れ、費用が掛からないことです。

 ただ、自筆証書遺言の要件を欠くと無効になりますし、簡単に作れるが故に偽造や変造がされやすいというデメリットもあります。また、自筆証書遺言の場合、家庭裁判所に遺言書を提出して検認の手続をしなければならないという点もデメリットといえます(民法1004条)。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 自筆証書遺言は、遺言をする人が遺言の内容の全文と日付と氏名を自書し、押印して作成します。1人で簡単に作ることができ、費用もかかりませんが、要件が厳格なので無効となる危険性があります。また、偽造や変造の危険性もあります。自筆証書遺言を作成するときは方式にも十分注意しましょう。

 方式や偽造等の心配がある場合には、公正証書遺言を作成した方がよいでしょう。

  

5.今回のポイント

 自筆証書遺言は、遺言をする人が遺言の内容の全文と日付と氏名を自書し、押印して作成します。

 代筆やパソコンで作成したものは無効です。

 日付がなかったり、年月だけで日の記載がないものも無効です。

 押印は実印である必要はありません。

 自筆証書遺言のメリットは、1人で簡単に作れ、費用が掛からないことです。

 

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弁護士費用(税別)

① 遺言書の作成(事業承継等のない定型の場合)

  着手金 10万円   

  報酬金 0円

 

② 遺言書の作成(事業承継等のある非定型の場合)

  着手金 遺産の額が3000万円以下の場合                      20万円

      遺産の額が3000万円を超えて4000万円以下の場合 30万円

      遺産の額が4000万円を超えて5000万円以下の場合 40万円

      遺産の額が5000万円を超える場合          50万円 

  報酬金 0円

 

③ 遺言の執行

  着手金 遺産の額が2000万円以下の場合           20万円

      遺産の額が2000万円を超えて2億円以下の場合  遺産の額×1%

      遺産の額が2億円を超える場合           遺産の額×0.5%+100万円

  報酬金 0円

 

④ 遺産の額の算定方法

  弁護士費用の基準となる遺産の額は負債を控除する前の額を基準とします。

  各遺産の額は相続税評価額を基準として算定します。ただし、課税価格の特例等による減額は考慮しません。

 

⑤ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、公証役場への手数料、交通費等の実費が発生します。  

 

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2016.11.14更新

お母様を亡くされた長男様から、不動産の遺産分割についてのご相談です。


1.ご相談者

 60代の男性

 ①被相続人

  80代の母

 ②相続人

  ご相談者(長男)、二男、長女

 ③遺産

  現金、預金、マンション

 

2.ご相談の内容

 母が亡くなり、相続の話をしているのですが、弟が母が住んでいたマンションが欲しいと言っています。

 私と妹は、現金で分けたいのですが、どうやって分けたらよいでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 遺産分割の方法には、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割があります。どの分割方法によるかは相続人の合意によって決めます。

  

(1)遺産分割にはどんな方法があるの?

 遺産分割は、遺産の種類や性質、相続人の年齢や職業、心身の状態、生活状況等を考慮して行いますが(民法906条)、遺産分割の方法として、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割があります。

 ①現物分割は、遺産をそのまま分割する方法で、一筆の土地を分筆して分ける場合もこれに含まれます。

 ②代償分割は、特定の相続人に遺産を取得させる代わりに、債務を負担させる(現金の支払等)方法です。

 ③換価分割は、遺産を売却して現金化したものを分ける方法です。

 ④共有分割は、遺産を相続人の共有にして分ける方法です。

 

(2)分割方法はどうやって決めるの?

 どの分割方法によるかは、相続人の合意によって決めます。

 合意できない場合には、家庭裁判所が上記の順に従ってどの方法が適当かを判断し、最終的に審判によって決めます。

 

(3)不動産はどうやって分割するの?

 不動産が複数あって、不動産の取得を希望する相続人が複数いる場合には、相続人間で調整して希望する不動産を取得します。1つの不動産に、取得を希望する相続人が複数いる場合も同様です。法定相続分との差額は預金や現金(代償金)等で調整します。

 不動産が1つか複数かにかかわらず、不動産を取得する相続人が1人の場合には、代償分割になることが多いでしょう。この場合、不動産を取得した相続人は、他の相続人に代償金を支払うことになります。

 相続人全員が現金を希望する場合には換価分割になります。この場合には、任意で不動産を売却し、売却代金から費用を除いた残金を法定相続分に従って分けることになります。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、弟がマンションを取得することを希望し、兄と妹が現金で分けることを希望するということなので、代償分割の方法によることになります。

 この場合、弟は、兄と妹に法定相続分との差額の代償金を支払う必要があります。弟が代償金を支払うことができれば問題ありませんが、代償金を支払うことができないということになれば、代償分割をすることができません。その場合は、換価分割にせざるを得ません。

 

5.今回のポイント

 遺産分割の方法には、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割があります。

 どの分割方法によるかは、相続人の合意によって決めますが、合意できない場合には、家庭裁判所が審判によって決めます。

 不動産の取得を希望する相続人が複数いる場合には、相続人間で調整して希望する不動産を取得します。

 不動産を取得する相続人が1人の場合には、代償分割になることが多いでしょう。

 相続人全員が現金を希望する場合には換価分割になります。

  

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弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

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2016.11.14更新

お母様を亡くされた三男様から、遺産分割の手続についてのご相談です。


1.ご相談者

 50代の男性

 ①被相続人

  70代の母

 ②相続人

  ご相談者(三男)と長男と二男

 ③遺産

  現金、預金、不動産、株式

 

2.ご相談の内容

 母が亡くなり、兄弟で相続の話をしています。長男は、実家に母と一緒に暮らしていたのですが、実家は自分がもらったうえ、残りの財産を3人で分けると言っています。私と二男が全部を平等にしないとおかしいと言っているのですが、全く話になりません。

 遺産分割の手続はどうしたらよいのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てます。

 

(1)遺産分割の申立てはどこにするの?

 相続人の間で話し合いがまとまらなかったときは、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に遺産分割の調停の申立てをします。

 審判の申立てをする場合には、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをしますが、通常は、調停の申立てをすることが多いでしょう。

 

(2)申立てはどうやってするの?

 遺産分割の調停の申立てにあたっては、まず、申立書を作成します。申立書は、裁判所用と相手方用の部数を用意します。

 申立書の他に、被相続人の除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、不動産の登記事項証明書、固定資産税評価証明書、遺言書など遺産分割に必要な書類を用意します。

 戸籍謄本や登記事項証明書などは、3か月以内に発行されたものが必要です。

 申立書のひな型や必要書類は、家庭裁判所の窓口やホームページにありますので、参考にして下さい。 

 

(3)遺産分割の調停はどのように進むの?

 調停では、裁判官と2名の調停委員からなる調停委員会が当事者双方から話を聞いて、遺産分割の方法について協議します。

 遺産分割の方法を決めるにあたっては、まず①相続人を確定し、次に②遺産の範囲を確定させ、③遺産を評価した後、④各自の取得額と誰がどの遺産を取得するかを決めていくことになります。

 この中で、特別受益や寄与分について協議することもできます。

  

(3)話し合いがまとまらなかったらどうなるの? 

 当事者間で合意ができれば、調停が成立します。

 合意できなければ、調停は不成立になり、審判の手続が開始されます。審判の手続では、家庭裁判所が事実の調査と証拠調べをして、審判をします。

 

(4)審判に不服がある場合どうするの?

 審判に不服がある場合、審判の告知を受けた日から2週間以内に即時抗告をする必要があります。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、長男との話し合いがまとまらないのであれば、遺産分割の調停を申し立てるほかありません。調停は、長男と二男を相手方として、長男か二男の住所地のいずれかを管轄する家庭裁判所に調停の申立てをします。

 申立てにあたっては、必要書類を揃えて、申立書と一緒に家庭裁判所に提出します。不明な点があれば、管轄の家庭裁判所に問い合わせると、教えてくれます。

 

5.今回のポイント

 相続人の間で話し合いがまとまらなかったときは、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に遺産分割の調停の申立てをします。

 申立てにあたっては、申立書を作成し、被相続人の除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、不動産の登記事項証明書、固定資産税評価証明書、遺言書など遺産分割に必要な書類を家庭裁判所に提出します。

 当事者間で合意ができれば、調停が成立します。合意できなければ、調停は不成立になり、審判の手続が開始されます。

 審判に不服がある場合、審判の告知を受けた日から2週間以内に即時抗告をする必要があります。

 

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まずは、お気軽にご相談ください。

 

弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

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2016.11.10更新

お父様を亡くされた二男様から、父の家業への参加と寄与分についてのご相談です。


1.ご相談者

 50代の男性

 ①被相続人

  70代の父

 ②相続人

  ご相談者(二男)と長男

 ③遺産

  現金、預金、不動産、株式

 

2.ご相談の内容

 父が亡くなり、兄と相続の話をしています。父は、個人で部品を製造販売をしていましたが、兄が後を継がないというので、私が父と一緒に仕事をし、事業を維持してきました。

 父の仕事を手伝ってきた私は、兄より多く相続することはできないのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 相続人(二男)が被相続人(父)の事業に労務の提供をしたことによって被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした場合には、寄与分(きよぶん)として多く相続することができます。

 

(1)寄与分(きよぶん)って何?

 寄与分とは、相続人が被相続人の事業に労務を提供したり、財産上の給付をしたり、療養看護をしたりして、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与があった場合に、寄与に相当する額を取得することを言います(民法904条の2)。

 

(2)寄与分はどんな場合に認められるの?

 寄与分が認められるためには、①相続人の寄与行為であること、②特別の寄与であること、③遺産が維持または増加したこと、④寄与行為と遺産の維持・増加に因果関係があることが必要です。

 ①については、原則として相続人の行為ですが、相続人でなくても、相続人の行為と同視できる場合には寄与分が認められることがあります。

 ②については、「特別」の寄与が必要で、通常期待される程度の貢献では寄与分は認められません。

 

(3)家業の手伝いは寄与分と認められるの?

 相続人が被相続人の家業の仕事をしている場合も寄与分が認められます。

 ただ、寄与分が認められるためには「特別」の寄与が必要なので、長期にわたって継続的に仕事をしていることが必要で、少し手伝ったという程度では「特別」の寄与にあたりません。

 例えば、長年、実家の薬局を手伝っていた子供が父の相続において寄与分を主張した事案で、裁判所は、父に代わって経営の中心となり、薬局を会社組織にした後も、店舗を新築するなどして経営規模を拡大し、父の遺産の維持又は増加に特別の寄与貢献をしたものと解せられるとして、約9000万円の遺産のうち、3000万円の寄与分を認めました(福岡家裁久留米支部平成4年9月28日審判)。

 他にも、親と一緒に農業をしていたという場合も、寄与分が問題になることがあります。

 

(4)寄与分が認められるとどうなるの?

 寄与分が認められると、遺産から寄与分に相当する額を除いた財産を基準として法定相続分の割合で算定した相続分と寄与分を併せて相続することができます。

 例えば、相続人が子供2人(A、B)で、相続が開始した時点での遺産が5000万円、Aの寄与分が1000万円とします。この場合、まず5000万円の遺産からAの寄与分1000万円を除き、残りの4000万円をAとBで2分の1ずつ分けます。最終的に、Aは3000万円、Bは2000万円を相続することになります。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、お父様の事業を単に手伝っているというのではなく、継続して仕事として一緒にしてきたというのであれば、寄与分が認められる可能性はあります。

 あとは、どの程度の給料をもらっていたのか、ご相談者の労働によってどの程度お父様の財産が増加し、あるいは維持されているのかが問題となりそうですが、これらの点がクリアできれば、寄与分が認められる可能性はあります。

 お兄様と相談して寄与分が決められない場合には、家庭裁判所に遺産分割の審判の申立てと寄与分を定める処分の審判の申立てをしましょう。

 

5.今回のポイント

 相続人が被相続人の事業に労務を提供して、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与があった場合には、寄与分にを取得することができます。

 寄与分が認められるためには、「特別」の寄与が必要です。単に仕事を手伝っていたという程度では「特別」の寄与にあたりません。

 寄与分が認められると、遺産から寄与分に相当する額を除いた財産を基準として法定相続分の割合で算定した相続分と寄与分を併せて相続することができます。

 寄与分が決まらない場合には、家庭裁判所に遺産分割の審判の申立てと寄与分を定める処分の審判の申立てをしましょう。

 

当弁護士へご相談の際には、初回60分の無料相談をご利用いただけます。

まずは、お気軽にご相談ください。

 

弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

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2016.10.22更新

お父様を亡くされたご長女から、介護と寄与分についてのご相談です。


1.ご相談者

 50代の女性

 ①被相続人

  70代の父

 ②相続人

  ご相談者(長女)と長男と母

 ③遺産

  現金、預金、不動産

 

2.ご相談の内容

 父が亡くなり、弟と相続の話をしています。父は7年前に脳梗塞で倒れて半身不随になり、食事を上手くすることができず、言語障害や失禁することもありました。私と母が食事や入浴など介護をしてきましたが、弟は全く介護に協力しませんでした。

 父を介護した私は弟より多く相続することはできないのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 相続人(長女)が被相続人(父)を療養看護することによって被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした場合には、寄与分(きよぶん)として多く相続することができます。

 

(1)寄与分(きよぶん)って何?

 寄与分とは、相続人が被相続人の事業に労務を提供したり、財産上の給付をしたり、療養看護をしたりして、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与があった場合に、寄与に相当する額を取得することを言います(民法904条の2)。

 

(2)寄与分はどんな場合に認められるの?

 寄与分が認められるためには、①相続人の寄与行為であること、②特別の寄与であること、③遺産が維持または増加したこと、④寄与行為と遺産の維持・増加に因果関係があることが必要です。

 ①については、原則として相続人の行為ですが、相続人でなくても、相続人の行為と同視できる場合には寄与分が認められることがあります。

 ②については、「特別」の寄与が必要で、通常期待される程度の貢献では寄与分は認められません。

 

(3)介護は寄与分と認められるの? 

 病気をした被相続人を介護した場合も寄与分が認められます。

 ただ、寄与分が認められるためには「特別」の寄与が必要なので、単に病人に付き添っていたという程度では「特別」の寄与にあたりません。

 例えば、Aによる被相続人の入院期間中の看護、死亡前半年間の介護は、本来家政婦などを雇って介護に当たらせるのが相当であり、それ以外の期間も入浴や食事や日常の介護が13年にわたって継続して行われたものであるから、同居の親族の扶養義務の範囲を超え、相続財産の維持に貢献したとして、200万円の寄与分を認めています(東京高裁平成22年9月13日判決)。

 また、夫婦が他方を介護する場合は、子供が親を介護する場合より、互いに扶助する義務(民法752条)の程度が強いので、寄与分が認められる場合が狭くなります。

 

(4)寄与分が認められるとどうなるの?

 寄与分が認められると、遺産から寄与分に相当する額を除いた財産を基準として法定相続分の割合で算定した相続分と寄与分を併せて相続することができます。 

 例えば、相続人が子供2人(A、B)で、相続が開始した時点での遺産が5000万円、Aの寄与分が1000万円とします。この場合、まず5000万円の遺産からAの寄与分1000万円を除き、残りの4000万円をAとBで2分の1ずつ分けます。最終的に、Aは3000万円、Bは2000万円を相続することになります。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、半身不随になったお父様の食事や入浴などの介護を7年間してきたということで、おそらく対価も受け取っていないでしょうから、特別の寄与として寄与分が認められる可能性があります。

 また、お母様についても、通常期待される程度を超えて貢献していると言える場合には、寄与分が認められる可能性があります。

 弟と相談して寄与分が決められない場合には、家庭裁判所に遺産分割の審判の申立てと寄与分を定める処分の審判の申立てをしましょう。

 

5.今回のポイント

 相続人が被相続人を療養看護して、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与があった場合には、寄与分にを取得することができます。

 寄与分が認められるためには、「特別」の寄与が必要です。単に病人に付き添っていたという程度では「特別」の寄与にあたりません。

 寄与分が認められると、遺産から寄与分に相当する額を除いた財産を基準として法定相続分の割合で算定した相続分と寄与分を併せて相続することができます。 

 寄与分が決まらない場合には、家庭裁判所に遺産分割の審判の申立てと寄与分を定める処分の審判の申立てをしましょう。

  

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まずは、お気軽にご相談ください。

 

弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

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2016.10.15更新

お父様を亡くされた二男様から、お父様の死亡保険金の取り扱いについてのご相談です。


1.ご相談者

 40代の男性

 ①被相続人

  60代の父

 ②相続人

  ご相談者(二男)と長男

 ③遺産

  現金、預金、不動産

 

2.ご相談の内容

 父が亡くなり、兄と相続のことで話をしています。兄は、父の死亡にあたって多額の死亡保険金を受け取りましたが、私は死亡保険金を一切受け取っていません。

 兄が受け取った父の死亡保険金は、相続にあたって考慮されないのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 死亡保険金も特別受益と同様に、相続で考慮されることがあります。

 

(1)特別受益(とくべつじゅえき)って何?

 特別受益とは、相続人が亡くなった人から遺言で贈与を受けたり、婚姻、養子縁組のために、あるいは、生計の資本として贈与を受けたりすることを言います(民法903条)。

 特別受益が認められると、これを遺産に加えて総遺産とし、この総遺産を基準として各自の具体的な相続分を算定します。贈与を受けた相続人は、その相続分から贈与された分を除いた分を相続することになります。

 

(2)死亡保険金は特別受益になるの?

 死亡保険金は、もともと保険金の受取人の固有の権利で、相続財産ではないので、理論的には特別受益には当たりません。

 ただ、特別受益に当たらないとすると、相続人の間で著しく不公平になることもあるので、そのような場合には、特別受益と同様に扱って、死亡保険金を遺産に加えて相続分を算定します。

 最高裁も、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条(特別受益)の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、特別受益に準じて持ち戻し(遺産に加えること)の対象となるとしています(最高裁平成16年10月29日決定)。

 

(3)どんな場合に特別受益に準じるの?

 特別受益に準じて扱うかどうかは、保険金の額、この額が遺産の総額に対する比率、保険金受取人である相続人、他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の事情を考慮して判断されます(上記最高裁判例)。

 例えば、父の相続で、遺産総額が1億円、2人の相続人のうち、1人(A)が死亡保険金1億円を受け取った事案で、裁判所は、Aが保険金の受取によって遺産総額に匹敵する巨額の利益を得ていることや、受取人がAに変更された際に、父母の扶養をAに託する明確な意図を認めることも困難であることを理由に、死亡保険金は特別受益に準じるとされました(東京高裁平成17年10月27日決定)。

 

(4)特別受益に準じるとどうなるの?

 特別受益に準じる場合には、相続が開始した時点での遺産に死亡保険金を加えて、具体的な相続分を算定し、死亡保険金を受けた相続人は、その分を除いて相続することになります。

 例えば、先程のように相続人が子供2人で、相続が開始した時点での遺産が1億円で、1人の相続人が死亡保険金1億円を受け取ったとします。この場合に、死亡保険金が特別受益と認められると、死亡保険金も遺産とみなすので、総遺産は2億円になります。したがって、それぞれの相続人は2億円の2分の1の1億円ずつを取得することになり、死亡保険金を受け取った相続人は0円、もう1人の相続人が1億円を相続することになります。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、お兄様が多額の死亡保険金を受け取っているとのことですが、「多額」がどの程度か不明ですので、直ちに特別受益に準じて扱われるかどうかは分かりません。

 特別受益に準じて扱われるかどうかは、保険金の額や遺産総額に対する比率等で判断されるので、まずは、その点を確認しましょう。

 

5.今回のポイント

 死亡保険金も相続人の間で著しく不公平になる場合には、特別受益に準じて、遺産に加えて相続分を算定されることがあります。 

 特別受益に準じて扱うかどうかは、保険金の額、この額が遺産の総額に対する比率、保険金受取人である相続人、他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の事情を考慮して判断されます。

 したがって、特別受益に準じるかどうかはケースバイケースと言えます。

 

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弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

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2016.10.08更新

お父様を亡くされたご長女から、兄の学費の取り扱いについてのご相談です。


1.ご相談者

 40代の女性

 ①被相続人

  60代の父

 ②相続人

  ご相談者(長女)と長男

 ③遺産

  現金、預金、不動産、株式

 

2.ご相談の内容

 父が亡くなり、兄と相続について話をしています。兄は、私立大学の医学部を卒業して医者になりましたが、父から相当高額な学費を払ってもらっていました。

 相続で兄の学資は考慮されないのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 特別受益として学資が考慮されることもあります。

 

(1)特別受益(とくべつじゅえき)って何?

 特別受益とは、相続人が亡くなった人から遺言で贈与を受けたり、婚姻、養子縁組のために、あるいは、生計の資本として贈与を受けたりすることを言います(民法903条)。

 特別受益が認められると、これを遺産に加えて総遺産とし、この総遺産を基準として各自の具体的な相続分を算定します。贈与を受けた相続人は、その相続分から贈与された分を除いた分を相続することになります。

 

(2)学資は特別受益になるの?

 学資が特別受益にあたるかどうかは、親の資産や社会的地位、他の相続人との比較によって判断されますが、一般的には、扶養の範囲内として特別受益とされないことが多いようです。

 例えば、大学付属中学校に入学し、10年間下宿生活をした長男に対して、学費と下宿費約1700万円が特別受益にあたると主張した事案で、裁判所は、「申立人が高等女学校を卒業後、師範学校を卒業したこと、また、他の子供も高等女学校等を卒業しており、かかる進学状況に照らし、長男のみが他の姉妹に比して高等教育を受けたということはできない。」として、特別受益と認めませんでした(京都家裁宮津支部平成18年10月24日審判)。

 ただ、学資が特別受益として全く認められないわけではありません。

 例えば、大学の入学金、授業料、下宿費を親に負担してもらっていた申立人に対して、これらが特別受益にあたると主張した事案で、裁判所は、「二女は農業に従事して父母の家計に貢献し、四女も給料の一部を渡していたことからすれば、申立人が大学学資の援助を受けていたことは、特別受益と評価すべきである。」として、特別受益を認めました(札幌高裁平成14年4月26日決定)。

 このように、学資が特別受益にあたるかどうかは、ケースバイケースと言えます。

 

(3)具体的な相続分はどうなるの?

 特別受益が認められない場合には、相続が開始した時点での遺産だけを基準として各自の具体的な相続分を算定します。

 これに対して、特別受益が認められた場合には、相続が開始した時点での遺産に特別受益を加えて、具体的な相続分を算定し、特別受益を受けた相続人は、その分を除いて相続することになります。

 例えば、相続人が子供2人で、相続が開始した時点での遺産が4000万円で、学資を2000万円とした場合を考えてみます。

 学資が特別受益と認められない場合には、2000万円は考慮せず、4000万円を基準として相続分を算定することになります。したがって、それぞれの相続人は4000万円の2分の1の2000万円ずつを相続することになります。

 これに対して、学資が特別受益と認められた場合には、学資の2000万円を遺産とみなすので、総遺産は6000万円になります。そうすると、それぞれの相続人は6000万円の2分の1の3000万円ずつを取得することになりますが、学資を受けた相続人は既に2000万円を受け取っているので、1000万円を相続し、もう1人の相続人だけが3000万円を相続することになります。 

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合、兄が私立大学の医学部を卒業しているとのことなので、数千万円の費用がかかっていると思われます。したがって、このような高額な学資であれば、特別受益にあたる可能性はあります。

 ただ、学資が特別受益にあたるかどうかは、親の資産や社会的地位、他の相続人との比較によって判断されるので、お父様の資産や社会的地位、ご相談者の学歴と比べて、扶養の範囲内と判断される可能性はあります。

 

5.今回のポイント

 学資が特別受益にあたるかどうかは、親の資産や社会的地位、他の相続人との比較によって判断されますが、一般的には、扶養の範囲内として特別受益とされないことが多いようです。 

 ただ、学資が特別受益として全く認められないわけではなく、ケースバイケースと言えます。

  

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弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

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③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

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2016.10.01更新

お母様を亡くされたご長男から、母の土地の無償使用の取り扱いについてのご相談です。


1.ご相談者

 50代の男性

 ①被相続人

  70代の母

 ②相続人

  ご相談者(長男)と二男

 ③遺産

  現金、預金、不動産

 

2.ご相談の内容

 私は、父が亡くなってしばらくしてから、母の土地に私が家を建てて、母と一緒に住むようになりました。今回、母の相続にあたって、弟から、「兄貴が母の土地をただで使っていたのだから、自分も遺産から同額のお金をもらう。」と言われています。

 母の土地を無償で使っていた場合、相続財産から弟にその利益分を払わないといけないのでしょうか? 

 

3.ご相談への回答

 土地を無償で使っていても、母と同居している場合には、利益分を払わなくてよい可能性もあります。

 

(1)特別受益(とくべつじゅえき)って何?

 特別受益とは、相続人が亡くなった人から遺言で贈与を受けたり、婚姻、養子縁組のために、あるいは、生計の資本として贈与を受けたりすることを言います(民法903条)。

 特別受益が認められると、これを遺産に加えて総遺産とし、この総遺産を基準として各自の具体的な相続分を算定します。贈与を受けた相続人は、その相続分から贈与された分を除いた分を相続することになります。

 

(2)土地の無償使用は特別受益になるの?

 土地を無償で使用する場合、一般的に土地の使用貸借契約が成立するので、使用借権による利益が特別受益となります。

 ただ、その場合であっても、親と同居している場合のように、特別受益を免除するような事情がある場合には、特別受益として考えない場合もあります。

 例えば、遺言によって遺産の全部を相続した二男(Y)が長男(X)に対して、25年以上、亡くなった親(A)の所有の土地に建物を建てて無償で使用した対価として1080万円を請求した事案で、裁判所は、「Aの希望によって本件土地上にXが居宅を新築し、XがA夫妻の老後の介護等を負担することで、本件土地の使用を許したものであり、Xの本件土地の無償使用は両親の介護等の見返りであって、生計の資本としての贈与に当たらない。」として、特別受益を認めませんでした(東京地裁平成19年3月27日判決)。

 

(3)具体的な相続分はどうなるの?

 特別受益が認められない場合には、相続が開始した時点での遺産だけを基準として各自の具体的な相続分を算定します。

 例えば、相続人が子供2人で、相続が開始した時点での遺産が1000万円で、土地の無償使用の対価を500万円とした場合を考えてみます。土地の無償使用が特別受益と認められない場合には、500万円は考慮せず、1000万円を基準として相続分を算定することになります。したがって、それぞれの相続人は1000万円の2分の1の500万円を取得することになります。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 ご相談者の場合も、お母様の土地に自分で建物を建て、お母様と一緒に住んでいたということですので、おそらくお母様の面倒を看ることが前提となっていたと思われます。そうすると、お母様の土地を無償で使用していたとしても、特別受益を免除したと考えられる可能性があります。

 したがって、そのような場合には、お母様亡くなった時点での遺産を基準として、法定相続分の2分の1ずつを取得することになります。

 

5.今回のポイント

 土地を無償で使用する場合、一般的には、使用借権による利益が特別受益となりますが、親と同居している場合のように、特別受益を免除するような事情がある場合には、特別受益として考えない場合もあります。

   

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弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

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2016.09.24更新

お父様を亡くされたご長男から、生前に父から弟に贈与された自宅の購入資金の取り扱いについてのご相談です。


1.ご相談者

 40代の男性

 ①被相続人

  70代の父

 ②相続人

  ご相談者(長男)と二男

 ③遺産

  現金、預金、不動産

 

2.ご相談の内容

 父が亡くなりました。弟は、生前、自宅のマンションを買うにあたって、父から1500万円を贈与されています。相続の話しの中で、私がこの1500万円についても考慮しないと不公平だと言ったところ、弟は、「兄貴だって実家にただで住んでいる。」と言って、話しがつきません。

 弟に自宅のマンションの購入資金として贈与された1500万円は、相続で考慮されないのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

マンションの購入資金も特別受益として相続で考慮されます。

 

(1)特別受益(とくべつじゅえき)って何?

 特別受益とは、相続人が亡くなった人から遺言で贈与を受けたり、婚姻、養子縁組のために、あるいは、生計の資本として贈与を受けたりすることを言います(民法903条)。

 

(2)マンションの購入資金は特別受益になるの?

 自宅のマンションの購入資金も、「生計の資本としての贈与」として特別受益にあたります。

 「生計の資本としての贈与」とは、生計に役立つ贈与は広く含まれるとされています。自宅のマンションの購入資金も、生計に役立つ贈与なので、特別受益にあたります。

 

(3)具体的な相続分はどうやって決めるの?

 特別受益が認められると、これを遺産に加えて総遺産とし、この総遺産を基準として各自の具体的な相続分を算定します。贈与を受けた相続人は、その相続分から贈与された分を除いた分を相続することになります。

 これだけでは分かりにくいので、具体的に見てみましょう。

 例えば、相続が開始した時点での遺産のうち、預金を1000万円、不動産を2500万円とし、弟が1500万円を贈与されたとします。

 弟に贈与された1500万円を特別受益とすると、遺産全体の総額は5000万円(1000万円+2500万円+1500万円=5000万円)になります。

 相続人は、長男と弟の2人なので、法定相続分は2分の1ずつになります。そうすると、長男と弟は、2500万円ずつ相続することになります。

 ただ、弟は、既に1500万円を受け取っているので、2500万円から1500万円を引いた1000万円を相続することになります。

 したがって、最終的には、長男が2500万円、弟が1000万円を相続することになります。

 

4.ご相談者へのアドバイス

 弟が生前受け取った自宅の購入資金の1500万円は特別受益にあたります。したがって、これを含めて遺産の総額を算定し、その総額の2分の1(法定相続分)にあたる金額を取得することになります。

 他方、弟は、あなたの金額から1500万円を引いた金額を取得することになります。

  

5.ご相談後の対応

 ご相談後、受任し、弟に内容証明を送り、交渉を開始しましたが、交渉ではまとまりませんでした。そこで、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをしました。

 調停では、1500万円を特別受益とし、長男が無償で父と同居していた点については特別受益としない点で合意できました。ただ、ご相談者が自宅の取得を希望したため、自宅をいくらと評価するかでなかなか合意できませんでした。

 この点については、お互いに不動産業者の査定価格を提出し、これに基づいて自宅の評価額を決めました。

 最終的には、ご長男が不動産を取得し、ご長男が自分の現金を持ち出すことなく、預金の範囲内で弟に支払うことができ、無事解決することができました。

 

6.今回のポイント

 マンションの購入資金も、「生計の資本としての贈与」として特別受益にあたります。 

 特別受益が認められると、これを遺産に加えて総遺産とし、この総遺産を基準として各自の具体的な相続分を算定します。

 贈与を受けた相続人は、その相続分から贈与された分を除いた分を相続することになります。

  

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弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

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2016.09.22更新

お父様を亡くされたご長男から、葬儀費用についてのご相談です。


1.ご相談者

 50代の男性

 ①被相続人

  70代の父

 ②相続人

  ご相談者(長男)と二男

  

2.ご相談の内容

 父が亡くなりました。父の葬儀にあたっては、私が喪主になり、葬儀費用を立て替えて払いました。後日、弟に葬儀費用の半分を請求したところ、喪主である私が全部負担すべきと言って、葬儀費用を払いません。

 葬儀費用は、喪主が全部負担しなければならないのでしょうか?

 

3.ご相談への回答

 葬儀費用は、喪主が全部負担しますが、相続人全員で負担することもあります。

 

(1)葬儀費用は誰が負担するの?

 葬儀費用を負担する人について法律に定めはなく、①喪主が負担する、②相続人全員で負担する、③相続財産から支出する、など考え方が分かれていますが、どのような葬儀をするかは喪主に委ねられているので、喪主が葬儀費用を負担するとされています。

 

(2)他の相続人は全く負担しないの?

 例えば、遺言で遺産の全部を取得した相続人(Y)が負担した葬儀費用について、Yが葬儀費用も相続財産に関する費用として、相続財産から支払われるべきと主張したのに対して、裁判所は、葬儀費用は、相続開始後に生じた債務であるから、喪主が負担すべきと判断しました(東京地裁平成26年3月28日判決)。 

 他方、入院・介護費用や葬儀費用を払った相続人(X)が他の相続人(Y)に相続分の割合に応じて費用の支払を請求した事案で、裁判所は、葬儀、法事等に関する費用は、これを実質的に主宰したものが負担するとした上で、喪主はXであるが、Yは葬儀会社を紹介してその手配をし、香典を払っていないことから、Yも葬儀を主宰する側にあったとして、Yにも相続分の割合に応じた費用負担を認めました(東京地裁平成27年9月29日判決)。

 こうして見ると、葬儀費用は喪主が負担することを前提に、ケースバイケースで判断されていると言えます。

 

4.ご相談者へのアドバイス 

 弟さんが言うように、葬儀費用は喪主が負担するのですが、喪主でない相続人も実質的に葬儀を主宰していたと言える場合には、葬儀費用を負担する場合がありえます。

 したがって、あなたの場合も、弟さんに相続分に応じた葬儀費用を請求できる可能性はあります。

 ただ、実際には、遺産分割調停の中で、話し合いにより葬儀費用を遺産の中から支出することが多いでしょう。

 

5.今回のポイント

 葬儀費用は喪主が負担しますが、喪主でない相続人であっても、相続分の割合に応じた葬儀費用を負担することもあります。

 

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まずは、お気軽にご相談ください。

 

弁護士費用(税別)

① 遺産分割調停事件

  着手金 20万円   

  報酬金 遺産分割で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺留分減殺請求訴訟・遺言無効確認請求訴訟等

  着手金 25万円

  報酬金 訴訟で得た金額の報酬額(③)

 

③ 遺産分割・訴訟で得た金額の報酬額

  300万円以下の場合          16%

  300万円を超えて3000万円までの場合  10%+18万円

  3000万円を超えて3億円までの場合    6%+138万円       

 

④ 着手金以外に日当は発生しません。

  その他に、印紙、郵券、交通費等の実費が発生します。  

 

 


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